【読書感想】「紙幣の博物誌」

紙幣の博物誌 (ちくま新書)

素材価値のない紙幣が通貨として安定して流通するためには、強大な権力、絶大な信用、それを支える確固とした法制がなければならず、戦乱のない平和な社会であることが必要とされてきた。そして紙幣の歴史は宗教、言語を含む民族の文化、国の経済、法律などを反映する人類の生活史の縮図でもある。このような視点から現代世界の紙幣を語る。

Amazon内容紹介より

以前読んで感想も書いた「通貨の日本史」では紙幣についての記述がそれほど多くはなかったので、それの補足も兼ねることが出来るかな、と読んでみました。やはり、お金のことについて考えることが多い毎日でしたしね*1。お金について考えないでもよくなる時はきっと来ないのだろうなあ、来たら死ぬ時なのだろうなあ、とか思いながら読みました。

さて「紙幣の博物誌」です。結論から書くと、本書では「通貨の日本史」の補足にはなりませんでした。「博物誌」というタイトルの通り、世界の様々な紙幣について書かれている本なのですけれども、新書ですのでそれほどのボリュームはありませんし、カラーでないのはもちろんのこと画像自体がほとんどなく、書かれている内容的にもWikipediaと同程度かな、という印象でした。本書の初版が1996年ですから、当時であれば読む理由も楽しさも感じられたでしょうけれども、現在ともなると物足りなさの方が感じられるでしょう。

これでボリュームが大型の図鑑のようなものになり画像も豊富であれば、情報として古かったとしても読む理由にはなりそうな気がしますが、さすがにこれだけだと厳しいかな、と感じます。もちろん、古かったとしても情報として新書サイズにまとまっている事自体には意味がありますし、本書を出発点として調べ始める、というのはアリなのかもしれません。ただ、そうするにしても本書には参考文献の類もありませんので、辿りようもないのですよね…*2

それにしても1996年初版の本書を読んで改めてユーロ移行からは2017年現在、まだ20年も経っていないのだなあ、ということに気付きました。その間、大いに期待される時期があり、また既に危機を叫ばれる時期を迎えていたりと、誕生から間もない時間でずいぶんと環境や印象が変わってしまうものですね。同時期に一度も基本的なデザインが変わらない紙幣もありますし、一口に「お金」と言っても、「通貨」であったり「硬貨」や「紙幣」を指していたりすることも含めて、語られるべきことはたくさんあるなあ、と思いました。

ところで変化と言えば、先程も挙げたWikipediaなども1996年には存在していません。その内容が万能なものだとは決して思いませんけれども、当時に比べると圧倒的に物事が調べやすい時代になっているのは間違いないのだなあ、と今回、各国紙幣の項目などを読んでいて思いました。今となっては普通のことではありますけれども、自分で調べればある程度の百科事典的な内容と、大抵の場合は画像も「日本語で」読むことができる、というのは物凄いことですよね。それによって存在が危うくなってしまうものがあったとしても、それは仕方のないことなのかも知れません。

そんな訳で「紙幣の博物誌」は当初の目論見が外れてしまった読書となりました。色々と厳しいことを書いてしまいましたが、文字を読むことの楽しさ自体は感じられる本でした。そのこと自体を感じられない読書はかなり稀ではありますけれども。

*1:出来れば、手元には硬貨ではなくて紙幣が増えて欲しいですし…

*2:そもそも参考文献を付けるような内容ではない、というのはありますが

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