明かされる、顧問と生徒の深い「絆」の協奏曲(コンチェルト)──…。3年連続金賞という重責を担う吹奏楽部部長、光岡音々。彼女は昔、トランペットではなく、サックスプレイヤーであった。顧問から命じられたコンバート、そこから這い上がった「絆」の物語が今、明かされる──…。
Amazon内容紹介より
バンドが長い長いトンネルを抜けて明るい雰囲気になったと思ったら、今度は「すばる先生」率いる吹奏楽部の部長「光岡さん」がなかなかのハマり込みっぷりを見せてくれています。8巻の感想文で書いたところによる「転調」のような気もしますし、実際解放感は感じませんでしたけれども、バンドとそれを描いているこの漫画自体に溜っていくパワーみたいなものを予感させてくれました。爆発する瞬間が楽しみすぎます。
さて、「シオリエクスペリエンス」9巻です。9巻においては「本田先生」に憑依しているおじさんであるところの「ジミ・ヘンドリックス」やその他の憑依しているミュージシャンたちはほとんどお話には関わってきませんでしたね。9巻は完全に光岡さんとすばる先生のエピソードになっています。これは泣けますね。まだまだ解決しなければいけない問題が山積みすぎるのですが、吹奏楽部としては結果も出ている中で、どうやってここから過去より長く続く業みたいなものを断ち切っていくのか、それとも断ち切れないのか、というところは大きな見せ場の1つになってきそうです。そして、また泣けること間違いなしですよ。
それにしても、これは音楽に限らずスポーツや他の分野でも同様なのでしょうけれども、「指導者」というのは本当に難しいですよね。すばる先生は「結果を出す」ということに関しては優秀なのは間違いなさそうですが、それが果たして指導者としてあるべき姿であるのか、というと否と言わざるを得ないでしょう。特に若い年代において、指導者自身も、また指導を受ける人やその関係者も結果を出すことを重視しすぎる、と指摘されることが多いように思いますが、これはやはり指導者の力量によるところが大きいのでしょうね。日本のサッカーにおける育成年代でも海外に比べて勝負を重視しすぎるところがあり、年齢が上がるごとに逆に勝負でも勝てなくなっていく、ということがよく言われていますし、きっと音楽の世界でも同じ様なことが言えるのではないでしょうか。
ちなみに光岡さんは最終的にバンドに加入するのでしょうかね。バンドに加入してしまえば、吹奏楽部として活動することは叶わなくなってしまう訳ですし、現状だとそちらを選択することはなさそうに思えてしまうのですが…。加入するとしたら、その時のバンド編成はなかなか面白いですよね。サックス・トランペットがいる雰囲気は個人的には「東京スカパラダイスオーケストラ」を連想してしまいます。想像しただけで幸せそうなバンドになりそうですよね。
ところでExp.37「SESSION」の扉絵の元ネタはその東京スカパラダイスオーケストラの「FULL-TENSION BEATERS」だと思うのですが、あのアルバムも最高でした[1]東京スカパラダイスオーケストラのアルバムのジャケット自体に元ネタがある可能性もあるかもしれませんが、そちらは知りません。確かレコーディングはほぼ一発録りだった、というようなエピソードを聞いたことがあるような気がしますけれども、それが本当だと思えるような緊張感のある音に溢れた一枚だったと思います。この漫画、シオリエクスペリエンスもそういった肌がピリピリするような緊張感を画から存分に感じさせてくれるところがあり、そこも大好きです。読んでいて疲れるのが難点ですけれども。そしてきっと、これからもたくさん疲れさせてくれることでしょう。
そんな訳で改めて今後の展開が楽しみな9巻でした。10巻に入って光岡さんとすばる先生のエピソードが続くのか、それとも一旦他のところに視線を移すのか、今からとても楽しみです。次は区切りよく10巻ですし、まとめて一気読みするチャンスですよ。オススメです。
References
↑1 | 東京スカパラダイスオーケストラのアルバムのジャケット自体に元ネタがある可能性もあるかもしれませんが、そちらは知りません |
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