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【読書感想】屋根裏の仏さま

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【読書感想】屋根裏の仏さま
屋根裏の仏さま / ジュリー・オオツカ 著 岩本正恵、小竹由美子 訳

20世紀初頭、写真だけを頼りに、アメリカに嫁いでいった娘たち――。その静かな声を甦らせる中篇小説。百年前、「写真花嫁」として渡米した娘たちは、何を夢みていたのか。厳しい労働を強いられながら、子を産み育て、あるいは喪い、懸命に築いた平穏な暮らし。だが、日米開戦とともにすべてが潰え、町を追われて日系人収容所へ――。女たちの静かなささやきが圧倒的な声となって立ち上がる、全米図書賞最終候補作。

Amazon内容紹介より

2022年の3月に読了しました。ようやく活字の本を読む気持ちになれた喜びを噛み締めつつ、ゆっくりゆっくりとした読書でした。すぐに感想文を書こうと思っていたのですが、読了から2ヶ月以上寝かせてしまいましたね。これを契機として、また読書と、その感想文を書いていく日々を繰り返していきたいところです。

さて、物語の中盤以降から終盤までは強制収容についての内容は登場しません。アメリカでの移民の悩み・苦しみ・喜び・ささやかな楽しみ…次々と複数人の女性の視点で語られます。大半は貧しいけれども、それは一様ではなく、成功をつかみ取って豊かな生活を送る人物も少なからず描かれています。自分がそれほどアメリカへ移民した日本人の強制収容について知らず、またそれほど興味を持たずにいましたが、本書を読んで、こうした『日本からの移民』ということ以外は職業も生活も住んでいるところも違う人々が過剰に予防的な措置で一斉に生活を捨てさせられる、ということは暴力以外の何物でもないな、と強く思いました[1]歴史をみても繰り返し行われていることですし、正当化されることの多い施策ではありますが…

ちなみに強制収容については、アメリカ社会のムード自体は怪しく不安を抱いていたものの、現実味がない各人に一気に降りかかったように描写されています。そしてそれが実際のところだったのだろうな、と想像します。2022年のウクライナなどでの出来事を見ていても、世の中は「まさか」の連続です[2]たとえ、事前情報として漏れ聞こえるものがあったとしても。過去の出来事を歴史として学んだことがある人が増えた現代であってもそうなのですから、物語の舞台になっている当時であれば尚更でしょう。もちろん、それは「学び」では身に付くものではないのかもしれませんけれども…。平成の時代の日本であれば、その手の出来事は歴史、もしくは途上国などでの話でしかなかったように思います。少なくとも日本からは遠い話だったでしょう。しかし、ここにきてとても身近になっています。単に自分が無知で無自覚であったからかもしれませんけれども、やはりここ数年の世界のニュースは歴史が大きく動きそうな予感を感じさせられるのです。

近い将来、この登場人物たちのようになるのが自分なのか、隣人なのか、遠い国の人なのか…。それが誰であっても、その起こっていることを知らない世界に住むのは不可能でしょう。完全なカタチではなかったとしても、断片や偏った情報は次々に飛び込んできます。目を閉じて生きることができないのであれば、日々学び続けるしかないでしょう。それで悲しみが小さくなることは決してないでしょうけれども。

本書を読んでいる最中、期せずして以下の記事を読みました。本書を読了した後に再度記事を読むと、この記事に登場する人物が、唯一収容所へ持っていくことを許された着物の入った衣装ケースを持って町を歩いて去っていくシーンが想像されました。起こっていることは悲惨ではありますが、本書内には収容所での描写がありませんし、登場人物たち全員が絶望している風でもない、何とも言えない美しさすら感じる物語終盤の一幕です。

日系アメリカ人一家の秘密だった強制収容、物置で発見された着物から明らかに - BBCニュース
80年前、米政府は日系アメリカ人を収容所に送り込んだ。いま、若い世代の日系アメリカ人たちが、質問を口に出している。

活字本を読むのも感想文を書くのも、単にブログに文章を書くのも数年単位ぶり、という状態なので、色々と手間取りました。本を読むことが日常だった日々には考えられないことではありますが、自分の人生のフェーズがそういう段階になってしまったことは受け入れるしかありません[3]そしてそれはとても幸せなことだと思っています。最初にも書きましたが、この読書と感想文を契機として、またこのブログの更新ももう少し頻繁に行っていけたらな、と思っています。そういった状況で読み、感想文を書くのにはとても適した読書でした。『あのころ、天皇は神だった』も近いうちに読みたいと思います。

References

References
1 歴史をみても繰り返し行われていることですし、正当化されることの多い施策ではありますが…
2 たとえ、事前情報として漏れ聞こえるものがあったとしても
3 そしてそれはとても幸せなことだと思っています

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