17世紀初頭、神聖ローマ帝国。この地において、裁判とは暴力であった――。原告と被告の決闘で有罪無罪が決まる「決闘裁判」が広く行われていた。「神は正しい方の人間を勝利に導く」という大義名分のもとに‥‥。ニコの治療と、将来の結婚(?)のためにイスラムの女医師・マヌエラが仲間に。その後、一行は有名代闘士「剣殺しのブリッツ」に会うため、シュデッケンハイムに向かうが、途中でプロテスタントの一団に捕らえられてしまう。彼らはシュデッケンハイムで起きた「プロテスタント狩り」から逃げてきており、その発端はニコの父・レオンだと話す。
Amazon内容紹介より
『決闘裁判』の完結巻である4巻です。初版は2019年3月。表紙は主人公の『ニコ・マイルズ』君ですけれども、裏表紙には『アリア・ルーインズ』ちゃんと知らない人たちが6人…。きっと普通にお話が続けばこれから登場してきた人物だったのだろうなあ、と思います。『アリア・ルーインズ』ちゃんも少し成長しているのかな、と思えるビジュアルです。3巻読了時までは何かしらの呪い的なもので成長しない、みたいなことなのかと思っていたのですが、違ったようです。『ヴォルフ』さんの狼の呪い的な話ともども、色々なことが4巻完結と共に闇の中…です。
さて『決闘裁判』最終巻の4巻です。最終話が前話から「3年後」という始まりの悲しみ…。しかも最終話の残り7ページで登場する成長した主人公『ニコ・マイルズ』君と恐らくは3年間で仲間となった人たち。これだけのお話が用意されていたのだなあ、と思うと残念でしかありません。もちろん作者である『宮下裕樹』氏がそれを一番感じているでしょうけれども。『ニコ・マイルズ』君のお父さんのお話も4巻までだと死んでいたと思ったら生きて登場して、登場したと思ったら息子である『ニコ・マイルズ』君の足を切断して、かなり狂った感じの炎使いの女の子を連れて逃げ帰った人、みたいなおかしな人になってしまいました。全体的に敵役キャラクターには狂った感じの人が多いので、そこまで目立ってはいませんでしたけれども…。ちなみに4巻最初のお話「Extra.2 その男、無慈悲につき」はマジで無慈悲でヤバかったです。『ヴァンシュタイン』さん、結局何がしたかったのか…。10巻完結くらいになったら、『ヴァンシュタイン』さんにも少しは気持ちを寄せられるようになったのかなあ、とか思いました。
そういえば3巻で一緒に行動を共にするようになった『マニエラ』さんも一瞬だけ登場しましたね。ペストマスクは被らずに頭に乗せている状態でした。単純に顔見せ効果なのか、3年間でイスラム世界の人がいてもそれほど問題にならなくなった世の中になったのか、そういう地方のお話ということなのか、実際のところはわかりませんが、最終話までしっかりと登場してくれたのは嬉しかったです。お話の最終目標である「集団決闘」の人数は7人対7人だということなので、『マヌエラ』さんはやはり戦闘要員には入っていなかったようです。とはいえ、主人公の『ニコ・マイルズ』君にしてもいくら戦いがメインのお話だからといっても毎回傷だらけどころの騒ぎじゃない負傷っぷりなのでお話の舞台となっている中世ヨーロッパの医療技術レベルを遥かに凌いでいるという設定の『マヌエラ』さんが同行するのには理にかなっていますね。できれば『マヌエラ』さんの活躍シーンをもっと長く見てみたかったところでした。ちなみに『ヴォルフ』さんの登場はなし。『ニコ・マイルズ』君が首に狼的なモフモフを巻いているので、きっと3年の間にあった色々の中でそこにいることになったのでしょう。語られて欲しかったです。
ところで、1巻から気になっていたカバー袖の部分に挿入されている『決闘裁判のグルメ』、4巻では「パンとビール」でした。まあ基本ではありますけれども、ちょっと肩透かし。1巻から順に「鯉」「うさぎ」「アイントプフ」「パンとビール」となりました。やはりいささか地味です。ちなみに各話間に挿入されている「アリア・ルーインズちゃんの行列のできる決闘裁判所!」という史実であった当時のことを書いてあるコラム的なコーナーの方は最後までお話の途中にもかかわらず、その内容についてのWikipediaを読んでしまうほどに面白かったです。これももっと読みたかったですね。
そんな訳で『決闘裁判』最終巻の4巻はどうしてもその終わり方から残念な印象の強いものとなってしまいました。巻末の作者あとがきには「一度完結」とのことが書かれていましたので、難しいかもしれませんけれども将来的な復活を期待したいところです。ちょっとエグ味の強い部分があるとは思いますけれども、お話的にはわりと王道ではあるので状況が少し違えばきっともっと読まれるお話になるかと思いました。残念な終わり方ではありましたが、自分としては結構好きです。
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