老ヤクザが姫に転生して、異世界無双!!歌舞伎町に縄張りを持つ、昔気質のヤクザ・龍松は、卑劣な罠に嵌められ命を落とした—-はずだったのだが、気がつくと異世界の美少女に転生してしまっていて…!?『東京カラス』『決闘裁判』の宮下裕樹と『正直不動産』『クロサギ』の夏原武がぶっ放す、異世界本格ヤクザファンタジー!!
Amazon内容紹介より
『任侠転生-異世界のヤクザ姫-』の最新巻の感想は以下になります
『任侠転生-異世界のヤクザ姫-』1巻の初版は2020年1月。タイトルの通り、任侠の世界に生きていた男性が異世界の美少女のお姫様に転生するという、いわゆる転生モノ。任侠と転生のかけ算と言ってしまえばそれまでですが、そこは原案『夏原武』氏と『宮下裕樹』氏のタッグですので、間違いなく力技だけではない作品になってくれるでしょう。期待しています。
さて『任侠転生-異世界のヤクザ姫-』1巻です。『宮下裕樹』氏の漫画は自分にしては珍しく作者買いする漫画ではありますが、この漫画に関しては正直買う前に悩みました。というのも、自分は任侠モノが苦手だからです。苦手になったのはかなり幼少期の頃からなので、それからほとんど情報がアップデートされてきませんでしたけれども、やはりどうしても痛そうで理不尽なことが多いと感じることが多かったのが、苦手と感じていた理由です。任侠モノの近隣領域にあるような不良少年漫画なども割と苦手なことが多かったので、まあこの辺りは単純に好みとして仕方がないものでしょう。とはいえ、原案がついているとは言っても『宮下裕樹』氏の漫画です…前作である『決闘裁判』の悲しい結末を考えると買わざるを得ない、という決断でした。そういった意味では同時期に連載が開始された『宮下裕樹』氏の漫画である『宇宙人ムームー』の方が、読みたかったと読む前から思えた作品ではありましたね。ちなみに任侠モノの作品においては、使われる言葉が一種独特である、といった特徴もあるかと思いますが、任侠モノに馴染みのない自分は『クンロク[1]p124』という言葉をこの漫画で初めて知りました。任侠モノを嗜む方にとってはわりと馴染みのある言葉なのでしょうかね。もちろん、こういった言葉はあえて意識して使うようにしているとは思うのですが、とはいえ、この辺りの一般的ではない用語のようなものには、できれば注釈を入れて欲しかったなあ、と思いました。ちなみに『クンロク』とは以下の意味だそうです。
脅迫罪となる寸前の脅しを意味する俗語。主に「クンロクを入れる」という風に使う。
Wikipedia – クンロク より
また、いわゆる転生モノの作品もそれほど好んで読みません。お話の中で転生システムが使われること自体にはそれほど拒否感がないのですが、お話の冒頭で物語世界の前提として転生してしまうものに関しては、やはり「その手の作品、多すぎでは?」と思ってしまうのですよね。また、転生させることでファンタジー世界をゼロから創造することもせず、問題を現実世界で描くこともしない中途半端さがどうしても感じられてしまうのです。もちろん、これだけ流行っているのですから、便利で魅力的なシステムなんだということは理解できます。ただ、今回のようなファンタジーの世界とはいえ存在していた人物に上書きする形で転生した場合、もともとの人格の行き先やその存在に対する上書きした側の意識[2]『任侠転生』の場合で言えば、『リュー姫』に対する『龍松』の意識の軽薄さはかなり気になります。今後、『任侠転生』ではこのままエンディングまでいくのか、それとも途中で『リュー姫』の意識が戻って内部で対立したりするのか、どういった形になるのかはわかりませんが、是非お話の中で決着を付けて欲しい部分ではあります。
ところで、この『任侠転生』での転生先である異世界は『リュウマのガゴウ』らしさがあって、少し懐かしくなりました。しっかりと異世界らしく異形の存在がうろついています。ただ、異形の存在と人との境界がかなり怪しい感じに描かれているので「あれ?この人、人間だったんだ!?」という気持ちにはなることがありました。まあ『宮下裕樹』氏の漫画において、人間が怪物化する描写はわりと日常茶飯事なので、この辺りは仕方がありません。1巻においてはこの異世界の自己紹介と事件解決のテンプレ作り、といったところでしょうから、まだまだわからないことだらけではありますが、異世界では現実世界でいうところの違法薬物が蔓延している、ということは完全に理解しましたね。異世界の違法薬物である『逢魔』についてはP92のシーンが鮮烈でした。このシーンを読むために『任侠転生-異世界のヤクザ姫-』1巻を読んでいた、と思える衝撃。「オラァ!!ちょっと待ってろよ、女。」からの「カンカンカン」「ズズズズ」「スンスン」ってこの文字列を追っているだけでは理解できないとは思いますが、面白すぎました。ぜひ読んでいただきたいです。ちなみに1巻のラストで魔王様のモノらしい小指を消滅させた『リュー姫』ですが、この小指、池から引き上げられた際に大量に目がついてました。それにもかかわらず、最後に魔王様が「我が…小指…誰だ?誰が消した?」と言っていたシーンも「えー見えていなかったのー!?」と笑ってしまいました。逆にあの状態で見えないのに何で目をつけようと思ったのだろう…と1巻の時点で魔王様の能力に疑問符を付けてしまいましたね。ただし魔王様のフォルムは少しだけ『アンスラサクス』味があって好きでした。
そんな訳で『任侠転生-異世界のヤクザ姫-』1巻は任侠や転生モノが好きな方には楽しめる漫画かと思います。完結してみれば名作だったなと思える『リュウマのガゴウ』も1巻の段階では何が何やら、といった感じだったことを考えれば、まだまだ判断するのには早いとは思いますので、任侠も転生モノも得意ではありませんが、読み続けようと思います。
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