海の宝石と称され、その華麗な色や形態からダイバーたちに大人気の海洋生物ウミウシ。しかし美しい姿とは裏腹にヒトが想像もつかないような驚くべき繁殖戦略をおこなっている! ウミウシをはじめ、奇想天外なあの手この手を駆使してたくましく生きる海の生き物たちのふしぎと海洋動物を対象とする行動生物学者たちの姿に迫るエッセイ。
Amazon内容紹介より
漫画ばかりで活字本を読めない日々が続いていますが、何とか一冊読みました。かなり長いこと積んであった「うれし、たのし、ウミウシ」です。岩波科学ライブラリーの本は薄くて読み易いですし、テーマも専門外の自分が読んでもわかりやすいものが多いので、わりと良く読みます。薄さのわりには若干いいお値段しますので、一文字あたりのコスパという点においては厳しいものがありますけれども。中高生にたくさんオススメしたいシリーズですね。
さて「うれし、たのし、ウミウシ」ですが、もうこれはタイトルの勝利というしかありません。もちろんDREAMS COME TRUEの「うれしい!たのしい!大好き!」からきているかと思われますが、なぜ「うれしい!たのしい!ウミウシ!」とせずに、同シングル収録の「うれしはずかし朝帰り」に若干寄せているのか、とかいうところは少し気になりました。特に深い理由はないでしょうけれども…。それはともかく、このタイトルにした時点でウミウシに少しでも興味がある方なら手に取ること間違いなしな本が出来上がってしまった感すらあります。
そこで肝心の内容になりますが、正直タイトルほど響くものはありませんでした。というよりも、タイトルにウミウシが主張大きめで入っているわりには、そして筆者のメインの研究対象がウミウシのわりには、ウミウシについての分量(文量)が少なすぎましたね。文量とすれば、前半に半分あったかどうか、といったところでしょう。もちろん、後半にしてもサンゴの話であったり臨海実習の話であったり、間接的にウミウシの話と言えなくもないものもあった、とは思いますけれども。ただ、やはりタイトルからウミウシのインパクトを感じてしまっている者としては、物足りなさが先行してしまいました。
またエッセイとして考えると、挿入されているイラストはどれも味があって良かったと思いますが、やはりウミウシだけは、ウミウシだけは!カラーで大きな写真を何点か付けて欲しかったです。もちろん、今ではウミウシの写真集のような本はそれほど珍しくはないので、写真を見たければそちらを、という考えもあるかと思いますけれども…。
そんな訳で、ここまで色々と書いてきましたが、ウミウシのことを考えずに科学エッセイとして読んだとしたら、とても読み易くわかり易い、科学の入り口としての機能を十分にもった本だったと思います。ただ、中高生に特別オススメしたくなるほどの熱量の感じる本であったかというと、そうではなかったですね。落ち着いた読書、という範疇に収まってしまう気がします。繰り返しになりますが、読み易くはあるので、読書に慣れてない中高生に向けて、という意味であればオススメできなくもないです。
個人的には随分と長いことできていなかった活字本の読書を再開するのに選んだ本としては、文量的にも内容的にもちょうど良かったと思います。このまま間隔を空けずに次の一冊も読むことができると良いのですが…。最後になりましたが、雌雄同体の生物のお話やペニスを自切するお話などはもう少し詳しく読みたかったので、他の本をあたることにしようと思います。この辺りのことに興味をもってしまうのはヒトとして仕方がないことなのかもしれません。本書でも触れられていますが、一般ニュース[1]ウミウシの“使い捨て”ペニス - マイナビニュースとしても取り上げられるくらいですからね。
References
↑1 | ウミウシの“使い捨て”ペニス - マイナビニュース |
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