漫画版和製マーク=トゥエインが送る海洋冒険奇譚。但し主な舞台は多摩川下流~東京湾。小学生男子と中学生女子(※実際は高校生女子で、Amazon掲載時の誤字と思われる)が木造潜水艇を駆使しての奇想天外でトホホな前代未聞の水中戦記です。
Amazon内容紹介より
見事な港湾冒険ショタ漫画でした。どんな感じのショタ漫画かと言うと、こんな感じです。あちらに書いた通り、ショタっぽさは全編通してこんな感じでした。小学生男子と高校生女子の組み合わせですけれども、この高校生女子、昂さんはちょっと手遅れっぽい感じですね。小学生男子、真潮君は確実に教育されてしまうことでしょう…。
さて、twitterなどでは基本的にショタショタしか言ってこなかった感想ですが、もちろんあさりよしとお氏ですからショタを描いて終わりな訳がありません[1]同時に自分がショタものに免疫がないだけ、ということも言えるかと思います。メインである六郷[2]多摩川下流域から東京湾という限られた範囲での潜水艦による小さな冒険に関しても、その冒険における問題点を想像のしにくいSF話にする訳ではなく、トイレや物資の問題、またはディスコミュニケーションの問題としていることで日常の延長として感じられるようにしっかりと描かれています。
ちなみに真潮君に潜水艦を与え、冒険へ誘ったのは謎の「猫のような猫」たち[3]水が苦手らしいのでリビアヤマネコのように水の少ない環境で生まれたのでしょうかね…なのですが、真潮君を選んだ理由は「秘密が漏れない」こと。これは決して口が固くて秘密を漏らさない、という意味だけではなく秘密を漏らす接点がない、ということのようです。実際に登場する真潮君の母親は何か月も真潮君の顔を見ていないと、ネグレクトを明らかにしています。また相棒[4]真潮君の椅子になることに選ばれた昂さんにしても、高校でいじめられており、周囲との関わりが少ないことから秘密を漏らす可能性が低い、と判断されているようです。
あさりよしとお氏の漫画らしく基本的にはコメディですので、ショタを挟みつつもお馬鹿な軽いノリで冒険が進みますが、上記のように冒険をする2人の背景は、必ずしも珍しくはないものの、なかなかに重いです。そして、その重さは物語のラストで特に際立ちます。色々あって2人は新しい舞台へ旅立って行くのですが、その際に同じ「秘密が漏れない」という条件を元にして100人が集められます。その100人については特に明言はありませんが、恐らくはほとんどが真潮君と同年齢。
狭い地域で一度に100人もの小学生が消えてしまうことも恐ろしいですが、そもそもその100人が様々な環境の中で「秘密が漏れない」と認定されている、ということが更に恐ろしいのです。恐ろしさを感じるのは、新たな冒険へと旅立つ100人たちにとっては前途洋々とした夢のある世界があっても、自分は既に夢のある世界を持たない残される側に属してしまっているからなのかもしれませんが…。
海洋冒険譚として描かれている漫画でありながら、最後に目指すべきフロンティアとしては深海ではない場所が設定されていることには、さすがあさりよしとお氏と思わなくもないです。やはり地球上にはフロンティアは存在しないということなのでしょうね。
そんな訳で「蒼の六郷」は、全体としてはライトな海洋冒険コメディとして描かれつつも、ショタで装飾をしたり、現実世界の人のダークな部分も見え隠れする、あさりよしとお氏的な漫画だったと思います。ちなみに「青の6号」という漫画とアニメに関しては今回初めて知ったので、機会をみつけてまずはアニメから観てみようと思います。
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