世界一の国になるには、素敵なお菓子が欠かせない!と考え、その甘い武器を磨いてきた国、フランス。ジャンヌ・ダルクやマリー・アントワネットが食べたのはどんなお菓子? 歴史を変えた伝説のパティシエとは? あの文豪もスイーツ男子だった? お菓子の由来も盛りだくさん! 歴史もしっかり学べる、華麗であま~いフランス史。
Amazon内容紹介より
著者である池上俊一氏の著作はいくつか読んでいますが、前著「パスタでたどるイタリア史」をはじめとして歴史を興味深い切り口から読ませてくれるものが多くて、かなり好きです。「~でたどる~史」は前著、本書に続いて「森と山と川でたどるドイツ史」も出版されているので、かなり売れているのだろうなあ、とか想像できますね。「森と山と川でたどるドイツ史」は未読なので、近いうちに読もうと思います。「パスタでたどるイタリア史」も再読しておきたいですね。
さて、本書を積ん読から崩した大きな理由としては、先日食べたサヴァランがあります。
食べて、Wikipediaでサヴァランの項目を読んでいると、不思議と歴史的な重みをまとった味のような気がしてきたのです。実際に名前の由来とされているブリア=サヴァランは歴史的に有名な人のようですし、著作「美味礼讃」もかなり重要な本と言ってもよいのでしょう。本書を読めば、そんなフランス史とお菓子、またはお菓子に関連する人物たちのことを楽しむことができるかな、と思ったのでした。
読んでみると、確かにフランス史の端々にお菓子の記述が挟まれているのですが、あまり織りなされている印象はありませんでした。どちらかと言うと、薄めのフランス史の中に当時のフランスのお菓子についてのコラムが多めに挿入されている感じでしょうか。もう少しフランスの通史的な部分を削ってもお菓子の歴史についての分量があれば違った印象になったのかもしれません。多くの方の求めているものがそれかどうかはわかりませんけれども…。
ところでフランス・お菓子・歴史とくれば、一番に思い付くのはマリー・アントワネットの「お菓子を食べればいいじゃない」発言ですが、その発言の真偽はともかく当時のマリー・アントワネットをはじめルイ16世や王族や貴族への民衆からのイメージを明確に表した、もしくはそういった印象にしたいどこかからの力学が働いている言葉であることは確かでしょうから、本書の中では触れられるものかと思っていました。
まさか、まったく触れられないとは…。きっと触れられない理由があるのでしょうけれども、だとしたらその理由も含めて触れて欲しかったな、と思いました。言葉の主が誰なのかはともかく、現代の日本においてもかなり有名な言葉であることは間違いないですし、当時の民衆と王族との温度差を感じさせる言葉であるのは間違いないでしょうからね。
ちなみに本書にはマリー・アントワネット自体についての記述はあります。本書によれば、マリー・アントワネットの好きなお菓子はクグロフだったようですよ。結構サヴァランと似たお菓子ですよね。実際にこのクグロフをもとにしてレクチンスキーという人物が「ババ」というお菓子を作ったとのこと。Wikipediaによれば、その「ババ」を改名したものがサヴァランのようですが、本書によるとババとサヴァランは似ているものの、別物のようです。お菓子の歴史にも色々ありますね。
そんな訳で、本書は個人的に期待値が高すぎたので若干の物足りなさを感じてしまいました。岩波ジュニア新書ですから、ボリューム的にはこのくらいだと思うのですが、切り口はもう少し何とかなったのでは…と思ってしまいます。それくらいに著者の「パスタでたどるイタリア史」や「動物裁判」は面白かったのですよね。気持ちを落ち着けるために美味しいお菓子を食べることにしましょう。
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