福の神伝説が残る島・寧島で暮らす中2の少女、早坂琉花。ある日、海辺で見つけた奇妙な置物を持ち帰った彼女は、ある「願い」を込めて、それを山の中の祠に置く。すると、彼女の目の前には、“フクノカミ”によく似た異形が現れた――。幼なじみを繋ぎ止めるため、少女が抱いた小さな願いが、この島を欲望まみれにすることになる。
Amazon 内容紹介より
5ヶ月ほど前に著者・堀尾省太氏の前作である刻刻の感想文を書いた際に、ゴールデンゴールドを連載していることを知ったのですが、単行本になって既に発売していることをつい最近まで知りませんでした。うっかりしていましたね。出遅れてしまいました。先日、本屋さんをブラついていたら気が付いたので、慌てて買って読みました。まだ1巻の段階ですが、今作も期待を裏切らない面白さになりそうです。
さて、ゴールデンゴールドですけれども福の神と思われるものにまつわるお話のようですが、まだ1巻ですから、この福の神がどういったシステムで成り立っているのかはよくわかりません。しかしながら、舞台である島をたまたま訪れていた作家・黒蓮先生のパチンコ屋さんでの実験によって、福の神を持っている人自体の金運が単純にアップする、という効果ではないようだということがわかりました[1]黒蓮先生、見事に負けてしまいました…。ただ、パチンコ屋さんはお客が大入りになり突然儲かり出したので、福の神が存在している建物には効果がありそうですね。これは主人公である琉花ちゃんの家の民宿兼雑貨店が儲かり出したことからも言えると思います。ちなみにパチンコ屋さんは島外にありましたので、その影響は島内・島外関係なくあるようです。
また福の神によって儲かる影響力の範囲はそれほど広くはなさそうです。まあ、広かったとしたらお金の行き来がトータルとしては変わらなくなってしまいますから「儲かる」ことになりませんものね。同一建物内、という設定になるのかもしれません。しかしそうなってくると、琉花ちゃんが福の神から自転車で逃げながら見付けた500円玉はどういう範囲で影響が発動した結果なのか、少し疑問は残ってしまいます。
さらに黒蓮先生と一緒に島を訪れていた編集者の青木君は途中で先に東京へ帰ってしまいましたが、その際に福の神の記憶をなくしてしまいました。それが福の神からの距離による影響なのか、それとも1回寝たことによる影響なのか、まだ謎ですね。どちらかと言うと、後者かなという感じはしますが[2] … Continue reading。
そしてこれが一番の問題かと思いますが、琉花ちゃんの「願い」がどの程度の効力を発揮するのか、というのがまだよめませんね。最終的にその目標へ向かうのか、特に関係ないのか…。琉花ちゃんのお願いの方向へ向かっているのだとしたら、パチンコ屋さんが儲かる理由は特になさそうなので、琉花ちゃんのお願いは特に関係ないのかもしれませんね。
ところで刻刻が「時間」をテーマにしたお話で、今回のゴールデンゴールドは恐らく「お金」。どちらも人間の欲が絡み合っていて深いところからの恐怖を感じます。ゴールデンゴールドに関して言えば、単純に福の神の顔も恐いですけど。そして、顔と言えばお話の冒頭部分、まだ刀を差している人が存在する時代に福の神と同じ顔をした人々が波打ち際で殺されているシーンは恐いというか、気持ち悪いというか何とも言えない気持ちになりました。あのシーンで読むのを諦めてしまう方がいないかちょっと心配です。自分も少しうわってなりましたので。しかし、そこさえ乗り越えることができれば、多くの方が楽しめる内容だと思いますね。
刻刻の時もそうでしたけれども、恐らく堀尾省太氏は保存則をかなり意識していると思うのですよね。刻刻ではそれがエネルギーに関することだったと思いますが、ゴールデンゴールドの場合は何になるのでしょうかね。お金と何かを等価交換していると見なされるのでしょうか。巻末の琉花ちゃんのお祖母ちゃんの顔を見ると、きっと何かがお金に変換されているのだろうな、という予感はするのですがまだまだ謎ですね。1人1人の顔が変化していく、ということは個人個人が別の閉じられた系ということなのだと思いますけれども。お話冒頭部分とお祖母ちゃんの顔の変化を考えると、島民が次々と福の神顔に変わって行く中で琉花ちゃんや黒蓮先生などの島出身でない人たちが解決策を探っていく、というお話になるのでしょう。
そんな訳で、「ゴールデンゴールド」1巻はまだまだ謎だらけですけれども、2巻以降が楽しみな内容でした。前作「刻刻」のことを考えれば、今後も期待して待っていても損はしなそうです。個人的には黒蓮先生の雰囲気が好きなので、活躍に期待したいです。
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