放課後満喫宣言。都市伝説の秘密、困っている少女の救出、謎の怪人とのバトル!! 僕らの放課後は、こんなにもドキドキに満ちている!! 熱さもユルさも出し惜しみなしの放課後ディテクティブ・ストーリー!! ――問題児ばかりを集めた特別な部活動「とっかぶ」。自称アマチュア・スパイとヒーロー志願の熱血少女が、後先なんて考えず、小さな事件を大事件に!
Amazon内容紹介より
「とっかぶ」作者である桑原太矩氏の次作「空挺ドラゴンズ」が発売される前に、この「とっかぶ」を再読して感想文にしておこうと思っていたのですが、結局は発売後まで書けませんでした[1]空挺ドラゴンズの発売日は11月7日。こんなはずでは…。こうなってしまえば先に空挺ドラゴンズの方の感想文を書こうかと思ったのですが、何となくそちらを書いてしまったら、こちらは書かずに終わりそうな予感がしたので、まずはこちらから。
さて「とっかぶ」は、主人公たちの属する「特別課外活動部」を略した名称ですが、その設立の経緯は主人公たちのうちの1人である問題児とされる人物のための救済措置です。確かに「とっかぶ」メンバー3人の内の2人は、設立時には問題児と呼ばれても仕方がなかったとは思いますが、お話が始まってからのアクの抜けっぷりも凄まじいものがあり、読んでいてもう少し癖があっても…とさえ思ってしまいました。まあ、メンバーのくらげ君[2]唯一の男の子メンバー。スパイが目標。が親しくなってからも、性衝動としてではなくスパイ的な行為としての盗聴や盗撮とかしていたら、ちょっとアレな感じがして嫌ですけれどもね。
ちなみに「とっかぶ」の活動を半強制的に始めさせたのは2人の教師ですが、近付きすぎることもなく最後まで程良い距離感で見守っている描写がなかなかの頻度で挟まれていたのは好ましかったです。お話も全体として「とっかぶ」が閉じた空間としての心地の良さを保ちつつも、しっかりと自分たちから周囲の生徒や社会へアプローチし続けるところ[3]主人公のサワちゃんに依るところが大きいのですが…が、読んでいて安心感がありました。心地の良い空間は下手をすると閉じ籠もりがちになってしまうこともありますからね。そういう意味では、このお話に出てくる登場人物はそれ程、酷く閉じ籠もってしまっている人物はいなかったと思います。
漫画全体として、エピソードにおける問題もその解決もキャラクターの味付けも、少し薄味なところがあります。キャラクターなどを見ると、設定としてはもっと濃い味になってもおかしくないと思うのですけれども…。個人的には濃い味の漫画は、本当に上手いことコントロールされていないと割とすぐに疲れてしまうことが多いので、このくらいの薄さが好みなのですが、読む方によっては物足りなさを感じる部分は少なからずあると思いますね。
また個人的には、完結巻である4巻のラストに挿入されているエピローグ部分は、少し直接的すぎる感じがしてしまいました。いくら優秀であったとしても、高校卒業してから10年せずに宇宙に行けるとは思えませんしね。できれば、もう少し地味で目立たないヒーロー像を追求していてくれていたら、もっと共感できる部分が多かったのではないかな、と思ってしまいました。ただ、読後感は青春の延長線上にあるべき爽やかさに溢れていて、とても良かったです。
そんな訳で「とっかぶ」は突き抜けた名作感はないものの、あっさり風味で気持ち良い青春を感じさせてくれる良作でした。「究極超人あ~る」までいってしまうと付いて行けないけど文化部気質で…みたいな方には心地が良い雰囲気を感じられるのではないでしょうか。そういう点からも4巻であっさりと終わったのは良かったのでは、と思います。今のところ「空挺ドラゴンズ」はかなり違う読み応えの漫画ですが、だからこそ「空挺ドラゴンズ」を読んで楽しめた方にはオススメしてみたいですね。
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