盲目の剣士・オセロット。冷戦下・旧ソ連のチェス王者・ユーリ。極北の鯨ハンター・エナ。人は何のために生まれ、死んでいくのか・・・!?この星の片隅で抗い続けた者たちを描く鮮烈の戦士列伝―――!!
Amazon 内容紹介より
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さて「HUMANITAS」ですが、そのタイトルの通り「人」を描いています。現代日本で暮らす「人」の生活とは、かなり遠いところで生きている「人」たちで、もちろん漫画の中の人物ではあるのですけれども、丁寧に描かれているからか、史実ではないのにもかかわらず、こんな人生をおくった人がいたのだろうな…と思えてきます。「あとがき」では本編にはほとんど出てきていませんが、それぞれのお話の世界での生活の基本となる食事に関しても、取材をしたり考えていたことが書かれており、そういう点が本編のリアリティにつながっているのかな、とか思いました。
また「あとがき」では一番初めの話である「オセロット」編を描くことになったきっかけとして、あるドキュメンタリー番組を挙げていましたが、恐らくはNHKスペシャルの「ヤノマミ 奥アマゾン 原初の森に生きる」のことでしょう。私も以前観ましたが、衝撃的な内容でした。以前、このブログでも書いたことのあるイゾラドの話に通じるところのある衝撃ですね。山本氏はこのドキュメンタリー番組を観た後に取材者の著書も読んだようですが、自分もチェックはしてあるものの、未読なので早く読まなくては、という気持ちになりました。
この「HUMANITAS」にしても、どの世界の生き方も本質的には理解の範疇の外にありながら、そのパワーに圧倒されながら読むというところが、先に挙げたNHKのドキュメンタリー番組などを観ている時の感覚に似ているのですが「HUMANITAS」では最後の「エナ」編にて作者としての、異質な世界に対する回答のようなものが登場人物の口を介して語られており、そういう意味では納得できるかどうかは別にして、心を揺さぶられて不安定なまま放り出されることのない安心感はありました。もちろん、ドキュメンタリー番組とフィクションの漫画での着地点の違いというのは、あって然るべきだと思いますし、個人的には漫画ではそこまでの重さは求めていないのでちょうど良いな、と思いましたが「エマ」編のエピローグ部分に蛇足感を感じる方もいるかも、とは思いました。
ところで「HUMANITAS」は全1巻となっていたので、続巻が出ることはないようですが、作者である山本氏の次の作品はきっと買うだろうな、と思います。新人作家とは思えない内容と完成度に次作への期待感はどうしても高まってしまいますね。合作での「異法人」という作品もあるようなので、次作を待つ間にそちらも読んでみようかと思います。
そんな訳で「HUMANITAS」は1巻完結で更には短編集なので、アッサリと読めるものの、その読み応えはかなりのものがある重厚な物語でした。普段は漫画を読まないような方でも満足できるような読み応えがあると思います。山本氏の次回作に大いに期待して待ちたいと思います。ぜひ、たくさん売れて欲しい漫画ですね。
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