好奇心旺盛なダイナーの娘・シェリーは、100年の刑を終えて出所したという老人と出会う。彼の名前はロブ。若い青年の姿のまま生きる“不老不死”の男だった。二人は“レディ&オールドマン”の通り名で、運び屋の仕事を始める。不老不死の謎を知るロブの双子の弟を一緒に捜すため、新しい人生を生きるため──。
Amazon内容紹介より
映画を観ているかのようなムードのある漫画「レディ&オールドマン」の2巻です。この漫画の舞台設定が映画のようなムードを作り上げている側面もあるとは思いますが、よくよく今まで読んだオノ・ナツメ氏の漫画を思い返すと時代劇物であっても、そうでなくてもわりと映画を観ている感じ、というのはある程度共通した感想なので、オノ・ナツメ氏という漫画家の特性といってもいいものなのかもしれませんね。その理由が絵柄によるものなのか、カット・コマ割りによるものなのか、台詞回しによりものなのか、などはわかりませんけれども。何はともあれ、とても雰囲気が好きな漫画ばかりです。
さて個人的にはサスペンス的な要素よりはロードムービー的な要素を期待していた「レディ&オールドマン」なのですけれども、2巻時点ではどちらかと言うとサスペンス要素が強そうですね。もう少し普通の運び屋として、穏やかなミッションを2人がお互いの距離を詰めながら続けていくのを見ていたかった気もします。ただサスペンス要素が強くなったことで、1巻時点ではどちらに転がっていくのかよくわからなかったお話が一定の方向に向かっているのがよくわかるようになって、読みやすくなったようにも感じます。ロードムービー的な内容だと、きっとお話もぼんやりしてしまって一般的には読むのが厳しかっただろうなあ、とか想像しますので、きっとこれで間違いないのだと思います。
また2巻ではシェリーの父親を「ジャッカル」という名で呼ぶ女性がロブの弟と思しき男性と会っていますが、よくよく考えるとこの女性、ロブとは会っていてもオールバックにサングラス姿の時とか、背後から見ただけなのですよね。その会い方がロブの弟と思しき男性との「どこかで会ったかしら?」…みたいなことに繋がるというところとかは本当に映画のような流れだよなあ、とか思って読んでいました。さらに元警察官の怪しい二人組とアンドリューとの会話でも、アンドリューがオールドマン[1]ロブのことを話そうとしたところで自然と押し留められて情報が二人組に流れなかったりする辺りは、現実でもよくある情報共有失敗パターンだな、とか思ったり。大抵の場合、そういう情報の重要度は高いですよね。二人組が「オールドマンって若いじゃんか!」と地団駄を踏むカウントダウンが始まりましたので、3巻以降のどこで出現するのか楽しみです。
ちなみにシェリーの父親は「ダイナー」というアダ名なのかと思っていましたが、「ダイナー」と言うのはお店の形態のことだったのですね。ずっと勘違いしていましたよ。Wikipediaの情報からすると、ロブにとってはこの「ダイナー」というスタイルの店舗自体も初めての体験だったのですね。まあ、きっとそれ以上に知らないことだらけ、驚きの連続でお店のスタイルを気にするどころではなかったでしょうけれども。自分は新しい、もしくは未体験の形態の店舗に入るのが苦手なのでロブがチョコレートサンデーを買えなかったのには、とても共感してしまいました。自分には100年後[2]100年前でもの社会で生きていける自信はありません。シェリーみたいな女性が目を留めてくれるためにはイケメン要素は必須だろうしなあ、とか思うとカナシミしかありませんね。
ところで1巻の時も書いた気がしますが、どう考えてもロブの不老・異常治癒能力が一番重要な事実のような気がするのですが…警察官を1人だけお店に張り付かせるくらいの重要度という認識しかなかったのでしょうかね。よくわかりません[3]そもそも普通に釈放したこと自体も理由がなければ理解できませんが…。登場人物たちの興味も優先度もそれほどは高くないようで、何となく不思議な気がしますが、現実的でないことですし、実際に目の前にそんな人物がいたとしても、緊急に対応するべき事案だとは感じないものなのかもしれないな、とか思いました。恐らくですが、2巻時点で一番重要度が高く扱われているサスペンス要素は不老・異常治癒能力と結び付いていくのでしょうしね[4]きっと結び付くのだと思いますし、結び付かなかったとしたら、なぜ!と思ってしまいますけれども…。
そんな訳で「レディ&オールドマン」2巻は映画を観ている雰囲気に包まれるお話が、しっかりと進行し始めた巻になりました。1巻の雰囲気が好きな方であれば引き続き楽しめる雰囲気と内容であったと思います。2巻末の不穏な雰囲気など、3巻のサスペンスの展開も今から楽しみです。3巻でロブが食べる甘い物は何が登場するのかも気になるところですね。
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