喫茶店店主の三雲さんと雑貨店店主の谷野くんは1階と2階にお店を構える間柄。くっつきそうでくっつかない、もどかしすぎるふたりの恋をそっと見守る間抜けで不思議な存在。読めばきっとやさしい気持ちになるスロー・ラブ・ストーリー!
Amazon 内容紹介より
「孤食ロボット」4巻と同時発売された岩岡ヒサエ氏らしい、ほっこり系ラブ・ストーリーが繰り広げられる単巻漫画です。繰り広げられる、と言ってもこぢんまりとした範囲でしかお話は展開していかないですし[1]舞台は2人のお店から半径5m以上出ません、恋の形も大人しめですので、穏やかな気持ちで読むことができる漫画でしたね。恋の進展が穏やかすぎて、もどかしくて焦れったく感じる方もいらっしゃると思いますけれども…。
さて、いくらスローと言ってもラブ・ストーリーであるこの「幸せのマチ」ですが、個人的にはまだまだ20代に見える2人が自分のお店を持っている[2]経営が厳しいながらも…ことが凄いなあ、と言うところが先に入ってきてしまって、今後のお店の経営が心配になってしまったり。ラブ・ストーリーが上手くいっても経営が大変すぎて結婚できない、とかなったら悲しすぎるな、とか思ってしまったのですよね。いや、もちろん結婚という形だけが幸せでもないとは思うのですが。お店が雑誌に取り上げられていたりはしていましたが、それほど街自体には活気が溢れている雰囲気ではなかったですしね。タイトルが「幸せのマチ」ですから、きっとマチ針から街まで幸せになってくれるはず、と信じることにします。
ところで「幸せのマチ」にしろ「孤食ロボット」にしろ、小物キャラクターと言えるようなかなり小型の人ではないキャラクターが活躍していますね。個人的にはこういうテイストの漫画における人外キャラクターとしては、霊的な存在よりはロボット・アンドロイドの方がしっくりくるのですが、「幸せのマチ」では霊的な存在としての効果は存分に発揮してくれていますし、憑依しているぬいぐるみがどれも可愛いのでほっこり感はかなりのものでした。まあ、本来は固く感じるはずのロボット・アンドロイドにしても岩岡ヒサエ氏の漫画においては柔らかそうな質感で、見ていてほっこりしてしまうのですけれども…。
ただ、マチ針経由でぬいぐるみに憑依した雑貨店店主の谷野くんのお母さん霊に関しては、生活全般を見守ってくれているとはいえ、母親に恋愛を見られているのは嫌だろうなあ、とか思ってしまいましたね。中には嫌ではない方もいらっしゃるとは思いますけれども。少なくとも自分は嫌です。父と母のどちらか選べと言われたら、まだ母かな、とは思いますが…せめて飼い犬の霊ならまだ良いかな[3]そもそもないことなので無駄な話ですね…。同時に自分がもし、万が一霊的な存在になったとしても親しい人の恋愛事情なんて絶対に見たくないな、と思ってしまいましたね。どこかの知らない人の恋愛であれば、何となく見守れそうな気がしますがね。
そんな訳で「幸せのマチ」は想像の通り、ゆったりとした空気の流れる温かいラブ・ストーリーでした。目新しいところはありませんけれども、ホッとできる素敵な漫画でしたね。疲れて帰宅した日に手にとってしまいたくなるお話でした。近所にこんな人たちがいる素敵なお店があれば、本当に幸せの街でしょうね。
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