本書では、中世ヨーロッパを中心に、かつて実在していた職業が、ゲームのユニット風に紹介されています。紹介されている職業は多岐にわたり、収録数はなんと100職以上!中世を愛する人、そしてファンタジーを愛する全ての人に向けて、伝説の同人誌が甦ります。
Amazon内容紹介より
「竜と勇者と配達人」のグレゴリウス山田氏による中世に実在していた職業をひたすらに紹介していく本です。本書はただただ凄いのでとにかく読んで、という他に特に言うこともないくらいの感想なのですが、一応絞り出して書こうと思います。表紙絵を見てうずうずした方は細かいことを気にせず買ってしまった方が幸せになれるでしょう。ちなみに価格は躊躇する理由にはならないと思いますよ。倍値くらいでやっと悩むのが正しいかと。それくらいにボリューム満点の内容です[1]とは言え、定価とされている価格で購入されることをオススメしますけれども…。
さて「中世実在職業解説本 十三世紀のハローワーク」ですが、こうやって感想を書いている自分ではありますが、まだ完全に隅から隅までを読み切った訳ではありません。そこそこ長い時間、断続的に読んでいますが、まだまだ楽しめそうですし何周でも繰り返して読めそうなくらいの情報量です。情報量の一例としてわかりやすいと思いますので、以下に索引兼総覧として巻末にまとめられていた職業を列挙しておきます。
悪党 / アサシン / 石工 / 異端審問官 / 犬神人 / 隠修士 / ヴァイキング / ヴァリャーギ / 鵜飼 / 乳母 / 煙突掃除人 / 傘貸し屋 / カストラート / 担ぎ屋 / かむろ / からくり技師 / 皮剥ぎ / キプカマヨク / 吟遊詩人 / 公人朝夕人 / 汲み取り人 / 鯨骨職人 / 剣士 / 剣闘士 / 鉱山奴隷 / 公示人 / 公証人 / 高利貸し / 粉ひき / コーヒー嗅ぎ / 魚売り女 / 三助 / 死刑執行人 / 持衰 / ジプシー / 写本師 / 狩狼官 / 訟師 / 神殿騎士 / 説教師 / 鮮魚飛脚 / 戦車競走手 / 占星術師 / 洗濯女 / 漕刑囚 / 染物師 / 太鼓持ち / 代書人 / 代闘士 / ダウザー / 鷹匠 / 調香師 / 聴罪師 / 徴税請負人 / 提灯持ち / 網職人 / 闘牛士 / 道化師 / 盗賊騎士 / 塔守 / どぶさらい / 鳥刺し / ドルイド / 泣き女 / 偽乞食 / ハイランダー / 墓泥棒 / 墓掘り / 伯楽 / 抜歯屋 / 花売り娘 / パン屋 / 飛脚 / 火消し / 匪賊 / 羊飼い / ビール妻 / 祓魔師 / ベナンダンティ / ベルセルク / 遍歴学生 / 放浪教師 / 墨家 / ポデスタ / 募兵官 / マッチ売り / マムルーク / 水売り / 免罪符売り / 銛打ち / 森番 / 紋章官 / 鉱山師 / 遊侠 / 夜の役人 / ランツクネヒト / 理髪外科医 / 錬金術師 / 蝋燭番 / 渡し守
いかがですかね。このジョブ数。RPGであれば、ジョブチェンジしているだけでゲームクリアが不可能になりそうな数ですよ…[2]上記ジョブ数だけでFF5のジョブ数の約4倍ありますからね。名前にしてもRPGでお馴染みの…みたいな職業から、文字列で何となく想像できる職業やまったく想像もできない職業まで、多種多様です。しかも上記に挙げた職業はあくまで索引になっている職業のみで、その職業から派生したものや関連するものなどは、それぞれの職業ページごとに更に追加されている、というかなりのボリューム。もちろん、表紙の雰囲気からもわかるように、内容は説明文だけではなく、若干気の抜けた雰囲気のある画もたくさん挿入されていて、とても読みやすいです。極端な話、文字を読まなくてもイラストを眺めているだけでも十二分に楽しめる内容になっています[3]もちろん、しっかりと読み込むのが一番楽しめるとは思いますけれども…[4]イラストの雰囲気などはAmazonさんにイメージが6ページ分ほどあるので、そちらを確認してみることをオススメします。
更にはステータスチャートも付いているので、本書を元にしてそのままゲームを始められそうな感じすらします。ちなみにチャートの数値は「根拠があるんだよ」と説明されていますが、同時に「資料が足りない部分はフィーリングで」とも書かれていますね。個人的にはその雰囲気だけでかなり楽しめるので、チャートが付いていたのは嬉しかったです。そして各チャートを眺めながら、もしも「二十一世紀のハローワーク」という本があったとして、自分の職業のチャートを眺めた時にはきっと絶望しかないだろうな、とか思いました。「鉱山奴隷」と似たチャートにならないことを祈っています…。
ところで本書は元々、同人で出版されていたとのことのようです。自分はまったく同人の世界を知らないのですが、こういうような心血を注いだ、ということがヒシヒシと伝わってくる本がたくさんあるのであれば同人の世界も覗いてみなければ…という気持ちになってきました[5]もちろん商業・同人関係なく、大抵の本は心血注がれて作られているとは思いますが。読んでいると伝説の同人誌と呼ばれる理由がよくわかります。もし世界史が嫌いな学生であっても、本書をてがかりに、本書に登場するような人々が生活している世界としての中世を考えると、勉強にも興味が湧いてくるように思います。同時に受験勉強としては大いに道を脱線する可能性大ではありますけれども…。
そんな訳で「中世実在職業解説本 十三世紀のハローワーク」はその内容の充実が物凄い、眺めているだけでも楽しめるとても豪華な一冊でした。紙の質感や色味も雰囲気があってカッコ良いです。ゲームなどの設定集好きであれば、一家に一冊というレベルでオススメしたいですね。専門書ではありませんけれども、興味深い情報が充実していますので中世好きにはたまらない一冊だと思います。
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