アイヌこそが縄文人の正統な末裔であることが、最近のさまざまな研究や調査で明らかになっている。平地人となることを拒否し、北海道という山中にとどまって縄文の習俗を最後まで守り通したアイヌの人びと、その文化を見ていけば、日本列島人の原郷の思想が明らかになるにちがいない。交易、祭祀、葬制、遺跡とその遺物、言語などの多方面にわたる最新のアイヌ研究を総合し、弥生文化を選択した現代日本人にとって、ありえたかもしれないもうひとつの歴史を叙述する野心的試み。
Amazon内容紹介より
先日読んだばかりの「アイヌ学入門」がとても興味深く、アイヌのことについて何も知らないなあ、ということを実感しまくりであったので、著者の次の著作である本書も読んでみることにしました。鉄は熱いうちに打て、とは言いますが、適切に打たなければいけないよな、と思ってしまう読書ではありました。
さて「アイヌと縄文」です。本書は第1章-アイヌの源郷、第2章-流動化する世界、第3章-商品化する世界、第4章-グローバル化する世界、第5章-アイヌの縄文思想、で構成されています。そして当然と言えば当然ですけれども、基本的には本書は「アイヌ学入門」とほとんど同じ内容が書かれている部分も多いです。読んだ時期の間隔が短かったこともあり、また理解の深さよりも浅くても出来るだけ広い知識を欲している自分としては、少し退屈な読書になってしまった部分もありました[1]あまりにも続け様に読みすぎてしまった自分が悪いだけです。しかし「アイヌ学入門」と題されていた前著よりも、もう少し踏み込んだ内容もありますので、理解を深めたい方には続けて読むと効果的なようにも思います。
個人的には前著で気になっていた沈黙交易に関しての部分が第5章で触れられていたので、一番興味深く読みました。正直、自分としてはこの部分だけでも満足感がありますね。アイヌに関しての内容ではなくなりますけれども、引き続き「贈与論」を読んでみたくなりました[2]内容的には難しそうなので、若干不安はありますけれども…。また「疑似親族」というシステムについても興味があるので、それに類する気軽に読める書籍があれば読んでみたいところです。
また第5章には少しだけではありますが、白頭山の噴火の影響による東北地方における移住に関しても触れられていて、小氷期によるものだけではなく、自然現象が歴史に与えたであろう影響についても考えさせられました。「10世紀中葉に東北北部全体で人口が半減した」と書かれていましたが、当時の人口自体はそれほどのボリュームではないにしろ、その影響が相当なものであったことは想像するのが難しくないですよね。
ところで著者の瀬川拓郎氏は、はてなダイアリーに結構長いこと継続して投稿されているのですよね。先日、前著を読んで感想文を書く際に検索したら、何となくそうかなあ、と感じたエントリーを読み、今回再びいくつかのエントリーを読んでみて、ほぼ間違いなくご本人であることを確認しました。idコールしてしまうのが嫌なのでURLは載せませんけれども。そのエントリーを読むことで、どうやって本書や前著が書かれてきたのか、何となく感じることが出来るので面白かったです。気になる方は本書に関連しそうな単語で検索すれば簡単に見付かると思いますので、試してみてください。
そんな訳で「アイヌと縄文」は前著から引き続き、自分がアイヌのことに関してほとんど何も知らなかった、またこれまで持っていたイメージと実際のアイヌ像との距離を改めて感じさせられるような本でした。また少し間を空けてから類書を読めればと思います。
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