「パスタを食べることでイタリア人はイタリア人であることを自覚する」―。地域色の強いイタリアで、人々の心を結ぶ力をもつパスタ。この国民食は、いつ、どのように成立したのでしょう。古代ローマのパスタの原型から、アラブ人が伝えた乾燥パスタ、大航海時代の舶来種トマト、国家統一に一役買った料理書まで。パスタをたどると、イタリアの歴史が見えてきます。
Amazon内容紹介より
「お菓子でたどるフランス史」を読んでから半年以上が経ったので「パスタでたどるイタリア史」を再読しておくことにしました。いつのまにか著者の本書と同一シリーズのような新著「王様でたどるイギリス史」も発売されているようなので「森と山と川でたどるドイツ史」と同じく、読んでおきたいところです。いつになるのかはわかりませんけれども…。
さて「パスタでたどるイタリア史」です。確かにイタリアと言えばパスタ。パスタと言えばイタリアですね。フランスとお菓子よりは連想することが多いのは間違いないと思います。そして、本書を読んでいると実際にイタリア史がパスタによって織り成されているように感じられました。フランスの場合は書かれている事柄の関連が薄いというか、フランスの歴史とお菓子が相互に影響し合って歴史を紡いできた、という印象があまり感じられなかったのですよね。その点では「パスタでたどるイタリア史」の方が面白い読書ではありました。
それにしても、さすがは岩波ジュニア新書と感じる一冊でしたね。パスタという日本人にとっても非常に身近な食べ物をテーマにしてイタリアの歴史をたどってくれるのですから、興味がわきやすくて当然のように思います。国家としての歴史はそれほど長くはないイタリアと、長かったその前史。また現在、一般的にパスタと言われて想像する様々な料理たちが誕生した近代と、それまでのパスタとして連想しないような料理としての長い前史時代。どちらも現代の形とはイコールではありませんけれども、脈々と受け継がれてきた共通のものたち、そしてそこに付け足されてきた要素たちがイタリアという国家とパスタという料理を作り上げたのだな、ということをドラマチックに感じられる内容でした。
そもそもイタリア史というのは高校までの世界史ではローマ帝国以降からイタリア統一までの間、ルネサンスの時期を除くとほとんど触れられていないように思いますので、自分で本を読んで獲得した知識しか持っていないのですよね。そういう意味では本書のような歴史の入門という位置付けの本をパスタという身近な料理を感じながら読むことができるというのは、とてもありがたいことでした。今回、再読ではありましたが、随分と間が空いていたので新たな気持ちで読むことができましたし、また少し間を空けて再読しても楽しめそうな気がします。
ところで本書を読んでパスタは米食やパン食に比べると、より文化的な要素が大きい食べ物のように思いました。それは本書でも書かれている通り、パスタが小麦などの穀物の加工から新大陸由来である具の食材までを、その土地土地に適した形で食してきたからだと思われますが、その結果として多様性を生んだり海外にまで波及したりする力となったであろう柔軟性があった反面、現在の形でのパスタの強度はそれほど強くはなく、これからも米やパンに比べると変化し易いのでは、と思いました。もちろん、食べ物の変化はそれほど急には起こらないと言われますから、その未来を自分が見ることは決してないでしょうけれども…。
そんな訳で「パスタでたどるイタリア史」は再読でも、とても楽しめる読書でした。イタリアの歴史を勉強したり、イタリアの歴史に関する本を読む基礎とするのに本書は最適ではないでしょうか。それほど間を空けずに「森と山と川でたどるドイツ史」と「王様でたどるイギリス史」も読もうと思います。
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