終末世界を旅する少女たちの“日常”を描く、新感覚日常漫画の第4弾。地下殻層を横断する列車の終着点までやって来たチトとユーリは、昇降機を使って地上に出ることに成功する。まぶしい夕陽の光にちょっぴり感傷的な気分になったあと、久しぶりの地上で周囲を探索する彼女たちが見つけたのは、なんとも奇妙な生き物。新たな仲間を加えて少し賑やかになった旅路だが、その先には想像を絶する体験が待っていた……!
Amazon内容紹介より
随分と長いこと感想文を書かないままになっていたので、5巻が発売される前に書くことにしました。恐らく夏から秋頃にかけて5巻が発売されると予想しているのですけれども、どうでしょうかね。今からどんな絶望が待っているのか、楽しみです。
さて「少女終末旅行」です。基本的には絶望です。まさに終末。人間世界の終末を描いた漫画は決して少なくはないですけれども、この少女終末旅行の終末度は今のところ、かなりレベルが高いと思います。4巻までに登場した人間は4人。内、レギュラーで登場しているのは主人公である少女チトとユーリの2人だけです。人間に限らず、生物という枠にしても、4人の他には生きている魚が1匹存在していただけです[1]4巻になって菌類のような存在は登場しましたが…。2人の旅行の始まりはまだ語られていませんけれども、水と食料と燃料を補給しながらの旅は絶望の中にいながらも、不思議と朗らかです。
ゲストとして登場したイシイとの別れのシーンでユーリが発した「絶望と仲良くなったのかも」という言葉は、きっと絶望的な状況の中で世界を旅する2人の少女の心持ち故の言葉なのでしょうね。それが朗らかさを感じる理由のようにも感じます。自分はそこまで絶望と仲良くするような心境には達せられないので、イシイとの別れのシーンやカナザワの地図を失ってしまったシーンにはかなり凹みましたけれども、絶望的な状況しか知らないと、チトとユーリのような悟りの境地に到達できるのかもしれません。別に悟りたい訳ではないですが。
それにしても2人の食料は常に多くても残り30日分程度、という見事なまでの絶望的な状況のようです。水は飲料に適しているのかは微妙な感じではありますけれども、比較的入手し易そうなものの、食べ物は大抵固形食料を食べている印象です。その他はイシイとイモを食べ、流れ着いた魚を食べ、チョコをチョコと認識せずに食べ、スープを1回飲んだだけでした[2]食べ物ではないですが、ビールも飲みましたね。漫画の中の時間経過がどのくらいなのかは正直よくわかりませんけれども、これを絶望的と言わず何と言うのか、というような感じです。チョコレートを食べたシーンでの「チョコ味の味」と言うシーンや、写真を撮る際に「はい チーズ」と言ってから、チーズ味の固形食料を食べて「なんなんだ チーズ」と言うシーンは終末感があって好きですね。
ところで4巻になって、それまでに石像として登場していた神様的な存在が、実在していたことがわかりましたね。単純な生物ではないようですが、形状的にはキノコのような菌糸の一種のような感じでもあるので、生物枠に入れることが出来るのかも知れません。熱的に不安定な物質を取り込んで体内で分解したり、音波を言語として解読したり出来るような謎の存在ですが、その「浄化」をする存在感からは、ナウシカ的なものを感じますね。巨神兵みたいな機械も登場しますし、「薙ぎ払え!」的なこともユーリがさせてしまっていますし…。個人的には良くわからない存在としてのヌコが可愛かったので、すぐにパーティーから離脱してしまったのが寂しかったのと、カナザワから譲渡されたデジカメを失ってしまったのが残念でした。愛車のケッテンクラートが分解されなかったことが救いでしょうかね。
そんな訳で「少女終末旅行」は絶望を感じられる終末が満載の漫画です。これからどのくらい続くのかはわかりませんし、どういった結末へ向かっているのかも想像出来ませんけれども、きっと今後も同じスタンスで絶望の世界を朗らかに旅行してくれるだろう、という安心感がありますね。ずっと眺めていたくなる漫画です。
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