山岳ロボティクスチャレンジ出場に向けて、西真工業の面々はロボット開発の最終段階に入る。チャレンジを主催する三帝ロボティクスの椎野賢一、国立ロボティクス研究所の音又カレン……。参加者たちはそれぞれに、技術力を駆使した策を弄する。一触即発の雪山登山、物語はクライマックスへ!!
Amazon内容紹介より
表紙絵が出た時に最終巻かあ、と思ったアイアンバディの4巻ですが、やはり最終巻でした。完結です。3巻の感想でも書いた通り、4,5巻での完結は予想通りではありますけれども「やはり終わってしまったかあ…」という感じが強いです。もう少し地味にジワジワと続いて欲しかった気がする漫画ですね。きっともっと地味に続けば面白みがわいてくる漫画だと思うのですよ。
さて「アイアンバディ」4巻です。最終巻な訳ですが、お話とすればキレイにまとまった感じです。リアル系ロボットエンジニア漫画ということで楽しく読んでいたのですけれども、やはり題材的にはリアルでなければならない点とフィクションとの調整が難しかったのかな、という印象はあります。読む方としても専門用語の連続では厳しいですが、謎技術の塊だとそれはそれで納得出来ないですからね。もっと人型にこだわるところの葛藤とかは見たかった気がします。個人的には葛藤しない主人公・西村君の人物像には、信念というポジティブなものよりは病的な部分を感じ取ってしまいましたし。
それにしても投資家の星山さんが思った以上の年齢のようで驚きました。30歳前後の時期に子ども時代の西村君たちに出会っていただなんて…。まあ業界によっては実年齢よりも相当若く見えるような人たちがたくさんいる、なんてこともよく言われるような気がしますし、そこまで不思議という程ではないことなのだとは思いますが。ただ、ラストが近いこの段階で挟む必要があったエピソードだったのか…少し疑問ではあります。このエピソードくらいの思い入れがないと投資家として行動が不自然だ、ということなのかもしれません。2巻で星山さんが神様のよう、と感想を書きましたが、その理由がここで語られている訳ですね。
ところで最後の雪山コンテストにしてもですが、「アイアンバディ」で厳しいなと思ったところは、コンテストのような形で他のロボットと競わせることでしか、ロボットの優秀さやロボットに対応するチームの状態を表現出来ていなかったのでは、と思えてしまったところです。コンテストに向けての作業は基本的にデスマ[1]デスマーチと資金難の連続で、それは現実世界でもきっと同じなのでしょうけれども、チーム作業での相乗効果みたいなことや思ってもいない発想の転換による問題解決、みたいなシーンが少なくて少数精鋭のスペシャルな人たちが集まったらスゴいロボット出来た、みたいな感じになってしまったように思えてしまったのですよね。4巻で唯一、と言って良いチームプレイのシーンである、イクミ君がロビンソンの膝裏のネジの設計ミスに気付いたところも西村君に変化を与える挫折[2] … Continue readingのように描かれてしまっていて、ナイスプレイ!とイクミ君をみんなで褒め称える雰囲気がまったくなかったのが残念でした。
そういう意味ではこの漫画の中でただ1人といって良い、スペシャルではなかったイクミ君の存在はかなり大きかったのだろうな、と思いましたね。そもそもチーム内で西村君は設計ミスをしない、というアンタッチャブルな存在になっているところが非常に気掛かりだったので、それを突き崩したのが技術的にはスペシャルな存在として描かれてこなかったイクミ君であったところは救いかな、と。本来であれば、スペシャルな存在同士がお互いを突っつきあって高みの登っていくべきだったとは思うのですが…。
そんな訳で「アイアンバディ」4巻はキレイにまとまった完結巻になったと思います。「アイアンバディ」全体としては、リアル系ロボットエンジニア漫画という難しいテーマを短くまとめきった熱量のある漫画だったのではないでしょうか。ところで三戸さん、特にキーマンになりませんでしたね…おかしいなあ。
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