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【漫画感想】「宙に参る」1巻

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宙に参る 1巻 / 肋骨凹介
宙に参る 1巻 / 肋骨凹介

宇宙船が今で言うセスナ機ぐらい身近になった世界のお話。機械やプログラミングに妙に長けている主婦・鵯(ひよどり)ソラは、病気で亡くなった夫の遺骨を義母に届けるため宇宙へと旅立った。道中のお供は人工知能を搭載したロボットである息子の宙二郎(ちゅうじろう)。長期渡航を目的として作られた巨大宇宙船、経由する様々なコロニー、いつか訪れそうな宇宙時代への期待が膨らむ、近未来サイエンス・フィクション。次にくるマンガ大賞[webマンガ部門]ノミネート作品。SFの最前線を追うアンソロジーへ、本作第3話「永世中立棋星」収録。

Amazon内容紹介より

『宙に参る』1巻の初版は2020年3月。1巻の帯には『次にくるマンガ大賞2019 [Webマンガ部門]ノミネート作品』と書いてありました。ちなみに2巻の帯には『次にくるマンガ大賞2019-2020-2021 [Webマンガ部門] 3年連続ノミネート』と書いてありました。ずっと次にきそうな漫画ということでしょうか。確かにその感じ、わかるかもしれません。『あさりよしとお』氏の『アステロイド・マイナーズ』とかが好きだったら、きっと好きになるだろう漫画だろうな、と思います[1]自分は『アステロイド・マイナーズ』大好きです。3巻、待っているのになあ…

さて『宙に参る』1巻です。『宙に参る』1巻の冒頭、第1話『BONE IN SPACE』の出だし部分だけでもうヤられてしまいました。葬儀の場、お坊さんらしき人の後ろ姿を前にして、息子の『宙二朗』と名乗る、明らかにいわゆるロボット的な姿をしている人物[2]?が葬儀の遺族代表あいさつをしています。その後、写真かと思われたタブレット状のディスプレイを頭に付けられる『焼香ロボ』が登場します。そして息子と名乗っているロボットの横に立っている女性の夫が病死で亡くなったという葬儀だということ…もう、これだけで現在から地続きの未来が感じられてたまりませんでした。未来、SFはそれだけで興味をそそられる対象ではあるのですけれども、やはりその未来、SFが現実の世界とは完全に乖離してしまった世界だと面白さは半減してしまうような気がします。その点『宙に参る』は日本的な「葬儀」というレガシーなものを登場させることで、現在からの延長線上にある未来を感じさせてくれているように思います。

ところで『宙二朗』君の以下のセリフがとてもとても好きでした。

僕の一番身近な人は間違いなく母さんだけど僕が母さんでなく父さんに似ているのは父さんに似た立ち振る舞いの方が母さんの幸福度が高く観測されるからです

『宙に参る』 1巻 P35 第2話 『アン アブソリュート ロジック』より

言い回しはかなりアレな感じですけれども、本当に優しい気持ちになるセリフ。わりと自分も特に若い頃にはこういう姿勢を大切にしていた気がします。最近は少し違っているような気がしますが…。「観測」ってとても大事ですよね。また、漫画の特に過去語りのシーンで、いわゆる理系っぽい言葉遣い、コミュニケーション方法が使われています。この辺りはかなり好みがわかれそうなところのように思いますが、自分としては結構好きな設定でした。理系ホイホイっぽい感じはありますが…。

ちなみに第1巻の中盤くらいまでは宇宙・人口知能・ロボットSFの生活系漫画として続いていくのかなあ、とかボンヤリと思っていたのですが、1巻の中盤から後半にかけて、急激にお話が動いていきます。どうもノンビリとしたお話だけではないようです…[3]ノンビリ宇宙を旅するだけの世界線もちょっと見てみたかったなあ…とかは思いました。主人公格の『ひよどりソラ』さんと『ひよどり宙二朗』の2人の言動がわりとノンビリしている、というかおっとりしている風に描かれているので、それほど危機感を感じさせませんけれども、特に『鵯ソラ』さんの過去と技術・能力はこの未来の世界でも特A級を遥かに凌ぐ「魔女」扱いのシロモノのようです。敵対するのかしないのか、微妙な距離感にいる他の登場人物たちも各人がかなりこの世界の中では高度な能力を有しているようで、色々な事件が起こりそう、というよりも起こりはじめています。読者としてはノンビリしていいのかハラハラしていいのか、ちょっと態度が難しい部分もありますけれども、そこは絶妙なバランス、とも言えなくはないかな、と思いました。ちなみに『鵯ソラ』さんの魔女的能力、中二的な感覚で読んでいると単純に憧れます。

そんな訳で『宙に参る』1巻は宇宙・SF好きな方にはかなり刺さる作品だと思います。漫画の中の過去語り部分、『鵯ソラ』さんと第1話時点ですでに故人『鵯宇一』さんの会話がかなり好きなので、次巻以降もたくさん登場して欲しいところ。『宙二朗』君のデザインが可愛いので『宙二朗』君的なデバイスが欲しくなります。2022年10月28日に3巻も発売されます。とてもオススメ。

References

References
1 自分は『アステロイド・マイナーズ』大好きです。3巻、待っているのになあ…
2 ?
3 ノンビリ宇宙を旅するだけの世界線もちょっと見てみたかったなあ…とかは思いました

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