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【漫画感想】「リンドバーグ」 全8巻

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リンドバーグ 1巻
リンドバーグ 1巻 / アントンシク

周囲を絶壁に囲まれた、高地の国・エルドゥラ。空を飛ぼうとすることが禁じられたその王国で、プラモと名付けた不思議な生き物と暮らす…少年ニット!だが、ニットは夢を見ていた…大空を翔る冒険を!誰も見たことのない、未体験アドベンチャー巨編!今、空高く、胸をはずませて……始動!!!

Amazon 内容紹介より

Kindleで1,2,3巻が期間限定無料になっていた時に初めて読み、その後速攻で全巻買い揃えた[1]kindleではなく、紙の本で。漫画です。1巻の初版が2009年12月なので、6年以上もこんなに面白い漫画を知らなかっただなんて、もったいないことをしました。きっと同じように知らないだけで面白い漫画は山のようにあるのだろうなあ、と改めて思わされる機会になりましたね。

さて「リンドバーグ」ですが、上にある1巻のAmazonによる内容紹介を読んでもわかる通り、かなり王道をいっている、言ってみればかなりベタな設定の漫画ではあります。お話としては定番中の定番がてんこ盛りで、似た設定、似た展開であれば枚挙にいとまがないことでしょう。しかし、それでも最高に面白いと感じられるのは、漫画が設定だけでは語れない、ということなのだと思います。まあ、設定が大崩壊していて読むに耐えない、みたいな例も少なくないですので、設定が大切であることは間違いないですが…。

話をリンドバーグのことに戻しますと、この漫画はそのタイトルから想像出来るように空を飛ぶことにまつわるお話です。「リンドバーグ」の世界ではリンドバーグとはいわゆるドラゴンのような生き物のことで、主人公ニットがプラモと呼ぶ、1巻の表紙にいる薄桃色をした生き物もリンドバーグの一種です。ただ物語の始まりの時点では主人公はリンドバーグという言葉も、そのリンドバーグの後ろ脚が空気を蹴ることが出来、それを利用して空を飛んでいる世界があるということも知りません[2] … Continue reading。ある日、主人公の暮らしている外界との接触がなく閉じられている国に、シャークと名乗る男が空から飛んでくるところから物語が動き出します。

このシャークというキャラクター、空賊ということになっているのですが、このキャラクターにしても決して珍しいタイプの人物ではないどころか、この手の冒険活劇には大抵出現するタイプのキャラクターではあると思うのですけれども、その出現率の高さを納得せざるを得ない魅力がありました。とにかく野性味と優しさが滲み出ていてカッコ良かったです。どのキャラクターも活き活きと描かれている漫画ではありましたが、特に主人公ニットとこのシャークの2人は飛び抜けていたと思います。それに対して後半に出てくる敵方のキャラクターたちにはいま一歩感を感じてしまいました。その辺りが6,7巻になって少しお話の展開にパワー不足を感じた理由と言えるでしょう。そう考えると、この漫画の一番の魅力はキャラクター描写だったということになるのかもしれませんね。

ところで、お話のラストの展開には若干の駆け足感がありました。もう少しじっくりと、全10巻くらいでまとめても良かったのでは、と一気読みした立場からは思ってしまいます。キャラクター1人1人のエピソードをもう少し丁寧に拾っていけば、10巻どころか倍の巻数でも全然問題なく楽しめたと思いますけれども、10巻未満でキレイにまとまっている、というのもそれは1つの形ではあると思うので、一長一短なのかもしれません。とは言え、終わらせ方は物語の続きを感じさせてくれていますから、冒険は終わっていない、ということを想像で楽しめて読後感はとても素晴らしいものになっていると思います。

ただ物語の終わらせ方で一点だけ、これは好みの差ではあると思うのですけれども、個人的には最後の最後になっての女王の告白は必要だったかな、という疑問はもちました。確かに女王とその妹であるティルダとの関係は、初登場時から不自然さを感じさせるものではありましたが、物語の最後になって特に解決にもならない1人きりでの告白があることにより、その時点での女王の精神的な不安定さを感じられてしまったのです。その告白が女王とティルダとの間での出来事であれば、問題に向かい合っている、という評価も出来ると思いますけれども、そういう訳ではありませんし…。問題としては結構厄介な火種を残していますよね。しかも、この冒険譚の続きとしてあって欲しくはない種類の問題だと思います。

さてさて、ここまで随分と批判的なことを多めに書いてしまった気がしますが、基本的にはどれも「最高にワクワクして楽しかった!」という部分の蛇足にすぎません。王道が嫌い、という方でなければ、ほとんどの方がワクワクして純粋に楽しめる漫画だと思います。天空の城ラピュタや紅の豚が好きな人であれば、かなり楽しめるはずですよ。オススメです。

References

References
1 kindleではなく、紙の本で。
2 リンドバーグには基本的に羽がなく、それ単体では飛ぶことが出来ません。リンドバーグに複葉機のようなものを人工的に取り付けることによって飛びます。

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