「羊殺し」の最後の標的は—!?羊殺しの被害者の共通点とあかりの特徴が一致するなか、彼女が行方不明となり、懸命の捜索を続ける魁(かい)とオキナガたち。2015年12月24日。羊殺しの日が刻一刻と迫るなか、桔梗(ききょう)の魔の手は魁にまで迫る……12年毎の悪夢を止めることはできるのか。現代の吸血鬼×非日常ミステリー、ゆうきまさみの意欲作、クライマックスへ。
Amazon 内容紹介より
佳境が一段落してしまった感のある10巻でした。11巻はエピローグ的なお話になるのでしょうかね。自分のゆうきまさみ氏に対する信頼感は絶大なのでそれほど心配はしていませんけれども、11巻が丸々エピローグ的なお話だとして、その発売が2017年の初夏というのは、なかなかに難しそうな状態かな、とか思ってしまいました。個人的には「白暮のクロニクル」をサスペンスメインの漫画として読んでいなかったので、それほどは気になりませんが、サスペンス漫画として読んでいた方には先の楽しみが感じられない状態なのかもしれませんね。
さて「白暮のクロニクル」10巻はサスペンス要素のメインである「羊殺し」事件の解決巻になった訳ですけれども、圧倒的な長寿であるオキナガの桔梗さんが「羊殺し」のような事件を起こす理由が今のところまだ見当たらない気がしました。物心がついた頃[1]応仁の乱が起きた頃から犬猫を殺していた、という人物が500年近く経ってから「羊殺し」のような事件を起こしはじめる納得感みたいなものを11巻で得られないとかなりモヤモヤしそうな気がしますね。本人が少し語っているように500年近く、連続して殺人を犯し続けていたのは間違いないのでしょうけれども、なぜつい最近になってから「儀式」のような12年毎の事件が必要になったのか…気になります。
また11巻では桔梗さんによる事件語りがきっとあるのだと思うのですが、オキナガのような人間が「羊殺し」事件を引き起こしていたという事実が世の中に広まった時に漫画として、どう社会に反映させるのか、というところには非常に興味があります。物語の中盤では、オキナガという存在に対して、どちらかと言うとヒステリックな反応が少なくなかったと思うのですが、最終的にはどう着地させるのでしょうか。前作「鉄腕バーディー」の時は異星人たちを受け入れる側の一般人の描写はほとんどなかったと思うのですが[2]TVニュースがあったくらい?、元々オキナガという存在が知られている社会での反応についてはきっと描かれるだろうなあ、とか思うのです。もちろん雪村さんと伏木さんの個人的関係の行く先も気になりますが、それ以上にそちらが気になってしまっていますね。
それにしても人海戦術に組み込まれたオキナガの人たちの中に「スパイ」は本当にいたのでしょうか。そもそもスパイが存在していたかどうか、という問題もありますけれども、いたとしたらどの段階からか、というのも気になります。桔梗さんがそれほど思想的な話をしていないので、思想的な煽動とも思えませんし少人数なのだろうなあ、という予想はするのですが…。こうやって振り返ってみると事件自体は収束しましたが、何も解決はしていませんでしたね。本当の解決巻を待ちましょう。
そんな訳で「白暮のクロニクル」10巻は最終巻を前に急速に落ち着いた巻になったと思います。最終11巻の物語のしめ方次第で「白暮のクロニクル」全体の印象もガラッと変わってくるように思いますので、モヤモヤを残さない心地良い読後感を与えてくれるような11巻になってくれることを願って2017年初夏を待ちたいと思います。
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