お散歩好きが歩む、笑いあり涙ありの 「姉妹さんぽ」物語!忙しい両親に代わって、幼い頃から妹・くるみの世話をしてきた姉の市井・かりんは、妹の手がかからなくなると同時に自分のすべきことを見失ってしまう。さらに、喫茶店のマスターでもある理解者の祖父が倒れ、喫茶店をまかされることに!? 子供ではないが大人でもない、未熟な姉妹が「喫茶店」と「散歩」をとおして成長していく物語。
Amazon内容紹介より
「高杉さん家のおべんとう」の続編とも言えるシリーズ「かりん歩」の1巻です。主人公は別ですけれども「高杉さん家のおべんとう」の主要登場人物たちも重要そうな役どころで登場するので、元気そうで何よりだなあ、という少し懐かしい気分で読めました。
さて「高杉さん家のおべんとう」ではそのタイトル通り、お弁当・食を通して人との交わりが描かれていましたけれども、「かりん歩」は、歩くことを通して人と交わっていくお話のようですね。単に歩く、というよりは歩いてマッピングをしていくみたいです。どちらも地理的なお話ですね。特に「かりん歩」に関しては、NHKで放送していた「たんけんぼくのまち」を観ていた時のわくわく感を思い出しました[1]年齢がバレますね…。GoogleMapによって地図が随分と生活に身近なものになりましたけれども、マッピング作業は相変わらず、わくわくとした気持ちを呼び起こすものだな、と読みながら思いましたね。一時期、マッピングをしながら散歩をすることを続けていたのですが、いつの頃からか、ただ散歩をするだけになってしまったので、久しぶりにマッピングをしてみたくなりました。見慣れた街でも、新たに気付くことがあって面白いのですよね。
また、少し大人になった久留里ちゃんも早速登場しましたけれども、随分と印象が違いました。「高杉さん家のお弁当」の頃の圧倒的な美少女感は抜けてしまい、今をときめく女子アナウンサーになって活躍しているはずなのに、以前よりも地味に…。温巳(はるみ)君はまったくと言っていいほどに変わっていないので、色々と苦労をしているのかなあ、とかうがった見方をしてしまったり。ちなみに温巳君と久留里ちゃんの2人は4年間も離れていた末の結婚で、更に現在も新婚にもかかわらず週末婚状態らしく、なかなか心配になってしまいます。2人とも浮ついたところはなさそうですけれども、お互いがお互いをそれほど必要としていない、みたいな関係のように見えてしまって…。まあ結婚なんてものは千差万別、色々な関係があって良いとは思ってはいるのですがね。
そして「高杉さん家のおべんとう」から引き続き、全体的にコミュニケーションが苦手そうな人々がたくさん登場するので、読んでいて不安になることが少なくないです。もちろんそれは自分自身コミュニケーションが苦手だと感じているからなのだと分析しているのですが、そう感じているのは自分だけでしょうか。ちなみにそんな自分がかなり苦手とする空間が名古屋的な喫茶店であったりします。ここ最近、行く機会が劇的に増えたのですけれども、慣れません。
ところで意地悪な見方をすれば、主人公かりんちゃんの職業選択は実家が経済的な余裕があるからこその恵まれた選択だよなあ、とかは思いました[2]両親はどちらも会社員で父親は銀行員とのこと。もちろん選択肢がある人は気にせず最適な選択をして欲しいとは思うものの、このかりんちゃんの悩みは羨ましく感じてしまいましたね。自分が理央さんの立場だったら、弟くんの事件がなかったとしてもかりんちゃんのことは苦手だったろうな、とか思いました。そういう意味では自分が感情移入できそうなのは理央ちゃんかもしれません。
そんな訳で「かりん歩」は「高杉さん家のおべんとう」を読んでいた方には懐かしい再会を運んでくれる、そして同じ空気感を提供してくれるお話になっていました。とは言え、読んでいなければ楽しめない、ということもなかったと思います。お話としてはまだまだこれからなので、今後に期待ですね。
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