ザリガニは子どもたちの人気者であるが、実験動物として生物学者の間でも人気が高い。ものの気配を感じとって大きなハサミをふり上げる格好は、子どもだけでなく大人にも面白いが、この定型化された振舞いがどうして起こるかは、やっと最近になって明らかになってきた。分類と分布、体のつくり、生活史、感覚・行動など、一つの動物を通して動物学の共通の原則が理解できるように試みた、ザリガニづくしの異色の本。
Amazon内容紹介より
「映像研には手を出すな!」の帯に「ドラえもん、宮﨑駿、そしてザリガニが好きな人、集まれ!!」と書いてあったのを読んで、一番最初に頭に浮かんだのが、随分と長いこと積んであったこの本のことでした。こういうことがあると、今が読み時なのだろう、ということでスムーズに読み始めることができますね。キッカケは何でも良いのですが、こうやって連鎖反応的に読む本が決まっていくのはとても気持ちが良いです。
さて「ザリガニはなぜハサミをふるうのか」ですが、かなりキャッチーなタイトルではありますけれども、わりと難易度高めの新書でした。特にニューロンに関して書かれた後半の内容は、生物学の素養がないと厳しい読書になるかもしれませんね[1]自分にはあらゆる素養がないので、かなり厳しかったです…。ただし、文章と説明は丁寧ですので、しっかりと読んでいけば追っていくことは可能だと思います。図鑑のようにザリガニの生態について詳しく読みたい方には向いていないかもしれませんね。
とは言え、特に前半のザリガニに関しての興味深い記述の数々は本書に引き込まれること間違いなし、でしょう。とても身近なザリガニという生物に関する本ですし、そのザリガニには多くの方が幼い頃に一度は触れたことがあるでしょうから、そんな身近な生物であっても知らないことだらけだと言うことも感じられますし、単純に幼い頃の触れ合いを思い出して楽しめることも多いかもしれません。少なくとも自分はかなり楽しめました。
もちろん自分が幼い頃に触れていたザリガニにしてもそうですが、大抵の方が触れていたザリガニは外来種であるアメリカザリガニだと思われます。アメリカザリガニが外来種であることは、わりと広く知られている事実だと思いますが、そのアメリカザリガニが帰化した時の話も書かれており、地元にわりと近いところがアメリカザリガニが日本に帰化する第一歩の土地だったことを初めて知り[2]そして碑も立っていることを知り、何とも言えない気持ちになりました。しかも、自分の祖父母の世代くらいの時代から100年経たずに、ほぼ日本全国に分布してしまっており、理由としては結局は人間に依るところが大きかっただろう、ということで人が同じことを繰り返している愚かさを感じられてしまったりします[3]もちろんザリガニに関して、当時は必要と考えられていた訳ではありますが…。
ところでアイヌ名ではザリガニのことをテクンペコル・カムイ[4]手袋を持っている神の意と呼んでいたらしいのですが、食べることはしなかったようなのでゴールデンカムイには登場しないかな、とか考えてしまいました。いわゆるカニ味噌である中腸腺をヒンナヒンナと美味しそうに食べるアシリパさんは見ることが出来なそうで残念です[5] … Continue reading。
そんな訳で「ザリガニはなぜハサミをふるうのか」は少し難しい部分もあるものの、全体とすれば身近な生物であるザリガニの興味深いお話の詰まった楽しい読書ができる本でした。生物学の素養がある方であれば、より楽しめるのではないかな、と想像します。
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