全ページゆっくりと改修中です。御了承ください。

【読書感想】「通貨の日本史」

スポンサーリンク
通貨の日本史
通貨の日本史 / 高木 久史

中国からの輸入銭に頼った中世、石見銀山の「シルバーラッシュ」が世界経済を動かした戦国時代、デフレ対策に奔走した江戸の改革者たち、植民地の通貨政策……七世紀に無文銀銭が登場してから現在に至るまで、通貨をめぐる歴史は現代にも通じるエピソードに事欠かない。本書は、権力者たちの通貨政策のみならず、庶民の影響力にも注目しながら、その興味深い歩みをたどる。今も昔も欠かせない「カネ」をめぐる通史。

Amazon内容紹介より

昨年から読みたいリストにはずっと入っていたのですが、ここ最近自分の中でお金について考えることが多かったので手に取ってみました[1]考えないといけないのは「お金」のことについてであって、「通貨」のことではないのですが!。また以前、日銀の貨幣博物館へ行ったこともあったのですけれども、その時は体調不良で後半寝ていたので、その時のことを後悔しつつ通貨の歴史に関して気になっていたのですよね。あの時の体調が今でも悔やまれます…。東京、遠くなってしまったので。

さて「通貨の日本史」です。そのタイトル通り、通貨の古代から現代までの歴史が書かれています。通貨のように、これほど日常的に使っているにも関わらず、その歴史や成り立ち、仕組みをよく理解出来ていないものも多くないような気がしますね。よくわからないのに使える、というのだからシステムとしてよく出来ているのだろうな、という気持ちではいたのですが、本書を読むとそれこそ古代から支配層が決めた訳でもなく、利用する側が使っていたことを追認する形で仕組みが整えられてきたことがよくわかります。この辺りのことは本書にもほんの少しだけ書いてあったビットコインなどの仮想通貨に対する態度としても適用することが出来るのかもしれないな、と思いました。

そして本書には通貨に関する面白い事例がいくつも書かれていたのですが、その中の1つである省陌[2]せいはくというシステムはとても不思議な気がしました。省陌とは100枚未満の銭を100文とみなす習慣なのだそうです。時と場所によってその枚数は変化したようですが、中世日本では原則として97枚の銭の穴に紐を通してつないだ際に100文としたとのことです。差額3文は得するので、そこからは早起きは三文の徳ということわざが出来た、という説があるとも言われてもいるようですね。ことわざの由来の真偽はともかくとして、銭の流通量が足りずに、それを節約するためとはいえ、現代的な感覚としてはとても不思議な気がします。お釣りを出すのが難しいから1188円を1000円にする、みたいな感覚でしょうかね。ちなみに銭の流通量が過剰な地域では120枚を100枚とした所もあったようですよ。人の移動が広範に渡らない時代だからこそ、というシステムなのかもしれませんね。

また金貨は時代劇などで時々見るように封印されていることがあり、そうされている物の方が信用が高かったようです。現代の札束になされている帯封のようなものですね。帯封と違うのは、帯封の場合は封が帯状になっていて中身が見えない訳ではないのですが、金貨の場合は開封も原則として禁じられていて、基本的には中身の確認はなされなかった点でしょう。金貨のように、本来は物質的な価値があるから利用されている物なのにも関わらず、その物質自体の存在・状態を問わないというのは、なかなか不可解な気持ちにもなりますが、これは現代の紙幣利用と感覚的には変わらないことなのでしょう。まあ、帯封した札束を扱ったことがない自分のような庶民は、当時の封がされたような金貨を扱うこともなかったのだろうな、とは思いますけれども。

ところで中学の日本史で間違いなく覚えさせられるであろう、享保の改革・寛政の改革・天保の改革に関しても通貨政策という側面からの改革に関して書かれてます。中学で学ぶ歴史だから、ではありますが、当時勉強した際は単純化して解説されすぎていて「あれ?それだけ?」みたいな印象がありました。基本的には倹約倹約倹約というノリで教わった気がしますし。本書を読むと、それぞれ国のトップを司る人たちが知恵を振り絞って難題に立ち向かっていたことがよくわかります。当たり前ではありますが…。経済政策としては、それぞれの改革が同じ方向を向いている訳ではないので、説明するのが難しい事柄とはいえ、あまりに単純化しすぎるのもどうなのかなあ、と読んでいて思いました[3] … Continue reading。やはり大人ですから、自分でしっかりと勉強を続けないといけませんね。

そんな訳で「通貨の日本史」は再び「貨幣博物館」へ行きたくなる読書となりました。また本書自体はそれほど内容が難しい訳ではないにもかかわらず、その情報量は多いので読むのに時間がかかりましたね。本書を読んでから「貨幣博物館」に行くと、とても理解が深まるような気がします。ちなみに「貨幣博物館」は入館無料ですし、ボリュームもかなりあるのでかなりオススメです。体調さえ万全であれば、きっと楽しめるはずですよ。

References

References
1 考えないといけないのは「お金」のことについてであって、「通貨」のことではないのですが!
2 せいはく
3 もしかしたら、自分が習った先生が特別にそういう方だっただけなのかもしれませんし、自分が習っていた時代もすでに歴史の中のお話になってしまいそうではありますが…

コメント