17世紀。英国公認の海賊船に、博識かつ好奇心旺盛な探検家・ダンピアも乗船した──。未知の世界を食べて調べる、実在の人物と史実をもとにした海洋冒険飯漫画!作品世界をより深く楽しめるコラムやスピンオフ4コマ他、単行本用の特別描き下ろしを多数収録!
Amazon内容紹介より
『ダンピアのおいしい冒険』の最新巻の感想は以下になります
『ダンピアのおいしい冒険』1巻の初版は2020年8月。タイトルの「ダンピア」とは17世紀に実在した『ウィリアム・ダンピア』という人物です。それほど充実した内容ではありませんが、Wikipediaにも項目があるので以下のリンクから確認してみると面白そうな人物であることがわかるかと思います。帯の『僕は知りたい、世界の全てを。』という言葉はとても力強いですよね。
さて『ダンピアのおいしい冒険』の1巻です。わりと文字情報多めの漫画だと思います。イメージ的には『角川まんが学習シリーズ 日本の歴史』などの学習漫画に近い読み応えです。もちろん『ウィリアム・ダンピア』にしぼった内容ではあるので、1つ1つのエピソードについてはかなり詳細に描かれていますし、当然のことながら学習漫画に比べるとより物語的です。動きのある画は決して多くありませんけれども、クセの少ない絵柄ですので幅広い方が手に取りやすい種類の漫画ではないでしょうか。1巻に収録されているCHAP.1からCHAP.8のうちCHAP.7までは下のリンク先で読めるので、気になった方は一度そちらで読んでみることをオススメします。ちなみに最新6話も読めるので最近の流れも気なる方は是非[1]自分は単行本を買いたい派なので見ないように我慢しています…。
ちなみに『ダンピアのおいしい冒険』の下敷きになっているのは間違いなく『ウィリアム・ダンピア』自身が著している『最新世界周航記』でしょう。自分はまだ『最新世界周航記』を未読なのですが、岩波文庫の青で500ページ弱の上下巻で出版されています。そちらの本の時点でもう面白そうなので、漫画の下敷きとしての選択がもう大成功だったのではないかな、と思いました。『最新世界周航記』は岩波文庫で上下巻500ページ弱というだけである程度人を選ぶ読書になりそうですから、漫画である良さというのは間違いなくありそうです。何となくではありますが、知識の窓口としてはとても有効な漫画になりそうな予感があります。それこそ大航海時代の大きな範囲での歴史やもう少し細かく、当時発見された動植物や食べ物についての歴史についてなど、この漫画を入り口として調べ物が楽しくなりそうな内容になっていると言えるかと思います。自分としては漫画やゲームなどの手に取りやすい、触れやすいものから知識や知識とまではいかないまでも情報が増えていく、ということは少なからずありますし、そういった体験が大好きなので、この手の漫画がそもそも大好物なのですよね。
ところでタイトルの通り『ダンピアのおいしい冒険』には「おいしい」という言葉が付いていますが、その名の通り様々な食べ物が登場します。お話の中ではサメ、トド、ヤギ、ヤシ、イグアナ、ガラパゴスゾウガメ、プランテイン、バルバッコア[2]牛肉などが食べられています。中には本当に「おいしい」のかな?と思えるような食べ物も登場しますけれども、当時の長期航海の中で食料の確保というのは間違いなく最上位の問題ですし、未知の食材・珍しい食べ物にヨーロッパ人が接触していく歴史でもあるので、食べ物という観点で『ダンピア』の航海・冒険を描いていくのは理にかなっているな、と思いました。ただ、惜しむらくは登場する料理がそれほど美味しそうには感じられない点…。もちろん現代的な視点での「おいしさ」と当時のものは比較するものではないと思いますけれども、漫画的な表現の限界とも言えるのかもしれませんが、もう少し「おいしい」描写であって欲しかったなあ、と思ってしまいました。その点でジャンル違いではありますが、やはり『九井諒子』氏の『ダンジョン飯』は圧倒的に食べ物が美味しそうなのですよね…完全に想像上の食材にもかかわらず。今後『ダンピアのおいしい冒険』に登場する食べ物たちがよりおいしそうになることを期待したいです。
そんな訳で『ダンピアのおいしい冒険』1巻は知識の窓口としてもとても優秀な学習漫画のような側面がありつつ、単純にそのエピソード自体が興味深い作品になっていました。個人的には『最新世界周航記』は近いうちに読まなくてはならないな、と思わされました。とてもオススメ。
『ダンピアのおいしい冒険』の作者である『トマトスープ』氏による連載中の別作品『天幕のジャードゥーガル』の感想文を書きました。
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