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【読書感想】「スカライティ」 1巻

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スカライティ 1巻 / 日々曜
スカライティ 1巻 / 日々曜

ひとりぼっちのディストピア紀行、開幕!終わってしまった世界で、ひとりぼっちの旅を続けるロボット。アルスの目的は生き残った人間の未練を断ち切り、“殺す”こと。ディストピアで触れる人の営み。それはきっと、美しい。儚くも優しい終末紀行、開幕──

Amazon内容紹介より

『スカライティ』1巻の初版は2022年11月。帯には『映像研には手を出すな!』の『大童澄瞳』氏のコメントあり。文字情報の「ひとりぼっちのディストピア紀行」や「目的は生き残った人間の未練を断ち切り、”殺す”こと」と書かれている部分の印象と表紙をパッと見した時の印象の差がとても大きいなと感じました。表紙絵の通り、絵柄は丸みがあって可愛らしく温かみがあります。タイトルの『スカライティ』の意味はわかりませんけれども、ちょっと面白い響きのある言葉だと思いました[1]髑髏=スカルに光=ライトを足して+tyで『スカライティ』かな、とか推測しました

さて『スカライティ』1巻です。お話の出だしのモノローグで突然「殺しなさい」とか「滅亡させるために」という激しい書き方をされるのでシンドいお話かと想像して少し身構えたりもしますけれども、実際はかなり優しさに満ちたお話です。表紙絵の通り主人公『アルス』君の殺人ロボット感は皆無[2]まあ、このビジュアルで殺戮を繰り広げ始めたら、そちらの方が恐怖が大きそうですが…。描写としても読むのがツラくなるシーンはありません。実際のところの設定がどうなのかはわかりませんけれども、1巻を読んだ感じだと「殺す」というのは除霊というか、未練によって成仏できない魂を解放する、という程度の意味合いでしかなさそうに思えます。そもそもお話の登場人物たち自体に「生きている」様子が見られませんしね。ちなみに『アルス』君の「終末紀行」ということで『少女終末旅行』を連想しましたけれども、そちらに比べると圧倒的に気楽に読めます。それは登場人物たちが「生活」、すなわち衣食を気にしなくて済む存在だというところが理由かもしれません。登場人物たちが何かを食べているシーンはありませんでした。そして『スカライティ』に登場する「死」は完全に救いになっています。苦しみや悲しみとは無縁で、自分としてはこれを「死」と呼ぶには少し抵抗感がありました[3]唯一『アルス』君は悲しみ、というか寂しさを感じていたように描写されていましたが…。「死」はもっと強烈なものという感覚があります。「死」はこんなに綺麗でも美しくもない。ただ解放であることは確かなのでしょうけれども。その辺りの「生と死」についてがこの漫画のテーマになってくるのは間違いないでしょうから、今後のお話で納得感のあるものが読めると嬉しいです。

また『アルス』君の中に何かのプログラムが走っている描写があることからもロボット的な存在であることは確からしいですけれども、現代的な感覚からするとロボット然とはしていません。そして1巻では『アルス』君をつくった存在についての言及がなされていましたけれども、2巻以後で登場するのでしょうかね。ちなみに巻末にある2巻の予告の絵はなかなか衝撃的でした。ギロチンにかけられている少女がなんとも言えない表情をしているのが描かれています。予告の文章ではその少女が『アルス』君の世界にも変化をもたらすとのことでしたが、果たして…。後々に判明していくのか、もしくはよくわからないままお話が進行していくのか気になる点として、そもそものお話の世界の成り立ち、どんな世界なのか、ということ。また『アルス』君の存在の意味、『アルス』君をつくったと思われる存在について。更にこの世界と『アルス』君がどこを目指すのか、ということなどが挙げられますかね。『アルス』君はロボットとしてプログラムによって動いているようなので、『アルス』君の目指すところは「滅亡させること」以外にはないのだと思いますが、それがそのまま変わらないのかどうか、というところは気になりますね。漫画的にはお話が進むごとに、その部分が揺らいでいく方向になっていくのだとは予想しますけれども。

ところで1巻の最後のお話である6話の『砂漠の兄弟化石』は自分が弟として生きた時間がそこそこ長いのでかなりグッときました。自分の幼少期から少年期を振り返っても兄の影響下から出ることはなかったように思います。好きな物も好きでないものも、基本的には兄の影響でそうなっていました。ようやくその状態を少し脱したのは高校卒業頃、大学受験期だったでしょうか。今でも兄の影響の残り香のようなものはたくさん自分の中にありますが、それでも自分自身の足で立っている実感が自分にはあります。個人的には自分の人生を生き始めること自体が生への未練だとすると悲しい気持ちになってしまいますが、弟の『カウイ』君はそれで満足だったのかな…。弟仲間として、もう少し一人で長く生きてみて欲しかった気がします。ちなみに6話に関しては、兄の『マウイ』君について「化石の発掘」という時間経過で達成可能な明確な目標が存在したので殺人ロボットである『アルス』君が登場しなくても、いつかは「死んで」いたのでは?とかも思いました。その場合、結果として遺された『カウイ』君がどうなったかは、わからないですけれども…。などなど、色々と思うところはあるものの、心に響くお話だったのは間違いありません。

そんな訳で『スカライティ』1巻は スカライティはキャラクターの「死」を見せ付けることで「生きること」を読者に実感させるお話でした。まだまだ1巻なのでこれからどういった方向になっていくのかはわかりませんけれども、2巻以降のお話にも大いに期待したいところです。内容的にも優しいですし、絵柄も温かみがあり親しみやすいので、割と多くの方にとって読みやすい漫画なのではないでしょうか。

References

References
1 髑髏=スカルに光=ライトを足して+tyで『スカライティ』かな、とか推測しました
2 まあ、このビジュアルで殺戮を繰り広げ始めたら、そちらの方が恐怖が大きそうですが…
3 唯一『アルス』君は悲しみ、というか寂しさを感じていたように描写されていましたが…

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